佐藤智恵氏

佐藤 日本が世界に貢献するのに取り組むべきことは何ですか。

ハウエル 歴史的に見ても、日本はガラパゴス化する傾向がありますから、できる限り「開国」してほしいですね。

佐藤 現代の日本は、江戸時代に似ていると思いますか。

ハウエル そういう面もあります。日本を開かれた国にするか、それとも閉ざされた国にするのか。それを決めるのは政治的リーダーの役割ですが、今の状況は決して望ましいものではありません。現代の日本は私には「表面的には開いているように見えるけれども、実際は閉ざされている」ように見えます。実は、現在、アメリカも同様の問題を抱えていますが、それでは世界はよくなりません。

 日本人は明治のリーダーのように、もっとコスモポリタンになってほしいですね。

 明治のリーダーたちは本当に国際的だったと思います。積極的に欧米に留学しましたし、英語も堪能でした。北海道大学に留学していたとき、札幌農学校の英語の宿題の記録を見たことがありますが、当時の学生の英語力には感服した覚えがあります。外国人から英語を習う機会などほとんどなかったにもかかわらず、完璧な英語の作文を書いていたからです。明治の人たちがこれだけできたのだから、現代の日本人もその気になれば英語も話せるようになるし、コスモポリタンになることができると思います。

佐藤 なぜ世界中の人々がコスモポリタンになれば、世界はよりよくなるのですか。

ハウエル 人間には自分をよく見せたいという欲望がありますが、国家にも同じような欲望があります。ところが、他国にいい顔をするだけでは、自国の利益は守れません。そこに内向き志向が生まれ、対立が生まれます。ではどうすれば、お互いを利する関係を結べるのか。それには、人と人が交流して、互いに学び合うしかありません。実際に外国に滞在してみれば、外国の人たちの考え方や見方をよく理解できます。常識や偏見を超えて発想できるようになります。それがひいては自国も世界もよりよくすることにつながると私は信じています。

デビッド・ハウエル (David L. Howell)
ハーバード大学教授。同大学東アジア言語文明学部長。専門は日本史。ハーバード大学では学部生を対象に日本史の授業「アジアの中の日本、世界の中の日本」を教える。特に江戸時代、明治時代の社会史に詳しい。著書に「ニシンの近代史―北海道漁業と日本資本主義」(岩田書院)がある。
佐藤智恵(さとう・ちえ)
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。コロンビア大学経営大学院入学面接官、TBSテレビ番組審議会委員、日本ユニシス株式会社社外取締役。主な著者に『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、最新刊は『ハーバード日本史教室』。佐藤智恵オフィシャルサイトはこちら