平井 とりあえずはつながりやすいフェイスブックは福音ですね(笑)。最後にお聞きしたいのはこれからの大企業のリーダーは何を指標にすればいいのかということです。つまり、かつては株価が会社の成績表だといわれていたけれど、日本の企業の株価はそうはなっていない。ROI(投資利益率)やROE(自己資本利益率)が軽視されているように思います。縮小均衡しています。投資していません。というのが大企業の現状じゃないですか。どの企業がとは言いませんが、同業他社を比較して「なぜA社の時価総額がB社よりも低いんだ?」と首をかしげたくなるようなケースは多々あります。評価すべきポイントやKPIがずれているのではないかなと。

岡島 ひとつには四半期決算という短期の開示が求められ、市場もそれに影響を受けるというしくみの問題だと思います。管理会計的には優れたしくみかもしれませんが、四半期決算は過去の取組みの結果でしかない。株価というのは、足元の業績よりはいまやっているものが将来的に開花してどうなるか、それを現在価値に戻したもののはずでしょう。破壊的なイノベーションを起こすには、アジャイルに仮説検証をしながら、失敗という名の投資もある程度は必要になる。短期的な業績に一喜一憂することになれば、こうした失敗に挑戦しにくい風土を産んでしまうことにもなりかねません。

大企業は成長のチャンスに
恐れてはいけない

平井 アマゾンの成長期には、株主たちは経営のビジョン、ストーリーに共感し、投資しました。この健全な関係性は今でも継続していると思います。センスメイキングな理論があれば株主はついていく。その事業が本当に成功するかどうかを確実に当てるのは無理で、納得感やワクワク感で買う部分もある。

 僕がこうすればいいのにと思うのは企業の研究開発費用や投資の内訳を開示してほしいということですね。そうすれば、この企業はどういうところに賭けているのか、目配りできているのかがわかる。かりに投資している事業が赤字だとしても、ビジョンがはっきりしていれば株主にも伝わって、安定から買うのではなく、本当の意味で株主と企業が同じ方向を向いて利害が一致し、お金も事業も社会も好循環でまわると思うのです。

岡島 今日は大企業にとって耳の痛い話が多かったと思いますが(笑)、経営共創基盤(IGPI)の冨山和彦さんは、実はいまこそ大企業に勝機があると説かれています。大企業には知財も人材も、国家との折衝のパイプもバリューチェーンもある。これからはデジタル革命も、ソフトウェア的なカジュアルなものから人命に直結する自動運転や医学などシリアスなフェイズに移ってきている。シリアスな分野はまさに日本の大企業の得意とするところです。足りないのはリーダーシップだけ(笑)。

平井 はい、BCGDVも次の成長ドライバーは大企業にこそある、という考えの下、大企業のデジタルイノベーション実現をお手伝いすることをミッションに設立された組織です。だから、まさにその通りだと思いますね。岡島さんの著書『40歳が社長になる日』は、タイトルこそセンセーショナルですが、よく読むと非常に本質的ですよね。でもそれを新しいものはわからないとか、変化がこわい、みたいに見て見ぬふりをするのはもったいない。冒頭でも申し上げましたが、エスタブリッシュな企業もスタートアップも両方見ていらっしゃる岡島さんだから説得力がある。そして、その両方の現場を知るからこそ、人の目利きとしても新旧両方の企業の架け橋となっていらっしゃいますよね。

岡島 企業同士を越境してつなぐから、最近「ボンド・ガール」と言われているんです(笑)。

平井 BCGDVのビジネスでも、もし機会があれば、是非ボンド・ガールとして降臨していただきたいですね(笑)。

(構成/ライター 奥田由意 撮影/花城泰夢:BCGDV)

岡島悦子(おかじま えつこ)
株式会社プロノバ代表取締役社長。経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。筑波大学国際関係学類卒業後、三菱商事を経て、ハーバード大学経営大学院にてMBA取得。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2002年にグロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立ち上げに参画、2005年より代表取締役。2007年にプロノバ設立、代表取締役就任。「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。