拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第33回の講義では、「戦略」に焦点を当て、拙著、『知的プロフェッショナルへの戦略』(講談社)において述べたテーマを取り上げよう。
投資すべきは「日々の仕事の時間」
前回は、我々が「自己投資の戦略」を考えるときに陥る「三つの誤解」について述べた。
それは、
「何を投資するか」の誤解
「何に投資するか」の誤解
「何を投資の成果とするか」の誤解。
その三つである。
前回は、そのうち、第一の「何を投資するか」の誤解について述べた。
すなわち、我々は「自己投資」において投資するのは「資金」であると考える傾向があるが、実は、最も重要な投資は、「資金」ではなく、「時間」である。
前回は、そのことを述べたが、今回は、第二の「何に投資するか」の誤解について述べよう。
いま、多くのビジネスパーソンが、「自己投資」とは、仕事が終わった「アフターファイブ」や仕事の無い「ウィークエンド」を使って、専門知識や語学などを身につけたり、専門資格を取得するため学校に通ったりすることであると考えている。
しかし、残念ながら、この「自己投資」の発想では、知的プロフェッショナルとしての道は拓けない。
なぜなら、これから第四次産業革命が進み、10年以内に、人工知能が多くの知的職業を代替するようになっていくことを考えるならば、書物や学校で学ぶことのできる「専門的な知識」を身につけただけでは、決して活躍する人材にはなれないからである。
では、何が求められるのか。
それは、スキルやセンス、テクニックやノウハウ、さらには直観力や洞察力といった「職業的な智恵」である。知的プロフェッショナルとして活躍するためには、仕事の現場での体験を通じてのみ掴むことのできる「職業的な智恵」をこそ身につけなければならない。
そして、もしそうであるならば、ビジネスパーソンが、その貴重な「時間」という資本を投資すべきは、実は、「アフターファイブ」の学校でもなければ、「ウィークエンド」の書物でもない。
それは、「ワークタイム」の仕事である。
すなわち、ビジネスパーソンは、「日々の仕事」に対してこそ、最大の投資を行うべきであろう。
それは、なぜか。