ソーシャル・メディアの台頭によって、企業はこれまで以上にブランディングの基本を正しく理解し、魅力的な「ブランドの約束」を確立することが必要になっている。成功を収めている企業は、ソーシャル・メディアの速さと膨大な利用者数を利用しつつ、自社のマーケティング戦略を書き換えるのではなく、それをうまく軌道修正している。
プロクター・アンド・ギャンブルは、そうした取り組みをした先駆的な企業である。また、ソーシャル・メディアを使ってブランディングの基本、すなわち、(1)顧客への約束、(2)信頼、(3)継続的改善、(4)新たなイノベーションを強化した好例として、ヴァージン・アトランティック航空が挙げられる。企業は、ソーシャル・メディアを販売促進ではなく、顧客をより理解するために利用すべきだ。また、オンライン上では、それぞれのソーシャル・メディア独特の文化や暗黙のルールに従うことも忘れてはならない。
マーケターの誤解
例によって、世のマーケターは過剰に騒ぎ立てている。今回は、「従来のマーケティングが終わりを迎える」というのだ。ソーシャル・メディアの台頭と、消費者へのパワー・シフトのせいでーー。
Patrick Barwise
ロンドン・ビジネス・スクール 名誉教授
ショーン・ミーハン
Sean Meehan
IMD 教授
だが、これまでのマーケティング活動やブランドそのものが無意味になる社会になる、と考えるのは誤りである。むしろ反対である。ソーシャル・メディアによって、企業はこれまで以上に基本を正しく理解し、魅力的な「ブランドの約束」を打ち立て、それをしっかり果たすことが求められている。
顧客を(少なくとも長きにわたって)失望させることは、これまでも企業にとってリスキーであった。だがいまや、ソーシャル・メディアの規模とスピードゆえに、企業に至らない点があると、たちまち大きな痛手を被ることになる。
高価な割に簡単に開けられてしまうクリプトナイトの防犯ロックや、バッテリーから発火することがあるデルのラップトップPCに対する反感が、インターネットをきっかけに高まったのを考えてみればよい。
同じ理由で、常に約束どおりの成果を出す企業は、ソーシャル・メディアがその評判を増幅するため、大いに有利となる。
このように、ソーシャル・メディアの発展についていけないリスクは明らかである。だが、そこまで明白ではないものの、同じように危険なことは、ソーシャル・メディアに気を取られて基本を見失うことである。
我々は長い間、さまざまな業界の企業と協力してマーケティング戦略について研究してきた。この15年間は、ニュー・メディア、特に最近はソーシャル・メディアによるマーケティングに焦点を当てている。また、いくつかのニュー・メディア関連の新興企業が成功を収める過程にも直接関わってきた。そこには、顧客向けのアドバイザリー・パネルやオンライン・ブランド・コミュニティを専門とする企業も含まれる。
そして、我々は次のような結論を出した。この新しい環境で成功を収める企業は、自社ブランドの約束にたえず目を光らせながら、ソーシャル・メディアがもたらす多くのチャンスを利用している。また、マーケティング戦略を書き換えるのではなく、それをうまく修正している。