「一時金」が有利でも気を付けたい点
退職金の額や年金受取りの場合の運用率など条件にもよりますが、「一時金受取り」のほうが有利になるケースが多いです。しかし、注意点もあります。それは「ムダ遣い」です。
これまで手にしたことのない金額をまとめて受け取るため、受け取って数年以内に大盤振る舞いをして老後資金を大きく減らしてしまう人が少なくありません。
また、多額のお金を手にすると、「退職金運用病」にかかってしまう人も。この病にかかると「何か増えるものに預けないと、せっかくのお金がもったいない。リスクが小さく、そこそこ増える商品で運用したい」と考えます。
しかし、マイナス金利政策の状況下で安全確実に増える金融商品などありません。定年後に資産運用をはじめるなら、入門書を1~2冊読み、少額の資金で「練習」する期間を設けるようにしましょう。
年金受取りの注意点
年金受取りの注意点も見てみましょう。
「年金受取り」にすると、定期的な安定収入になるメリットがあります。公的年金に加え企業年金もあれば、比較的ゆとりのある年金生活を送ることができるでしょう。
しかし、生きている間ずっと受け取れる「終身年金」でない限り、受取り期間はいずれ終了します(終身の企業年金の会社はごくわずかです)。70歳ないしは75歳で国の年金だけになり収入がダウンしたときに、支出を見直すことができず、年間収支が大幅に赤字のままという家計を見かけます。
赤字補てんのために老後資金をどんどん取り崩し、70代半ばで貯蓄がほぼ底をつくといったケースは、実は大企業の退職者に少なくありません。定年後は収入がダウンするわけですから、早い段階で自ら「年金生活スイッチ」を押して、支出を大幅に減らす家計改革の実行は必要不可欠です。
また「年金受取り」にすると所得が多くなるため、金額によっては医療費や介護保険について、「現役並み所得者」として窓口負担や利用料が増える可能性があることも事前に知っておきましょう。このように年金収入が増えると、「手取り計算」では見えてこないデメリットも発生します。