かのドラッカーも指摘した
定時運行とファシズムの関係

 そんな馬鹿なと思うかもしれないが、列車の「定時運行」とファシズムの関係はいろいろな方たちが指摘していて、恐らく20世紀で最もファシズムに詳しいであろう方も言っている。ピーター・F・ドラッカーだ。

 ヒトラーに何度もインタビューをしたことがあるこの人は、1933年、ナチスが政権を取った日の数週間後に書き始めた『「経済人」の終わり』(ダイヤモンド社)の中で以下のように書いている。

『イタリアの印象を聞かれて、「乞食がいなかった。汽車が時間通りに走っていた」と答えた老婦人を馬鹿にしてはならない。なまじの論文よりも、よほどファシズムの本質をついている。ファシズムにおいては、汽車が時間通りに走り、乞食が大通りから追い払われる。南大西洋で最高速の船を運航し、世界一道幅の広い道路をつくる。組織と技術の細部それ自体が目的と化す。技術的、経済的、軍事的な有用性さえ、二の次となる』(『「経済人」の終わり』より)

新幹線運行の技術と正確さに世界が称賛!
新幹線の車内清掃に外国人観光客がびっくり!

 こんな言説が溢れかえる「新幹線」は完全に、ドラッカーの言う「組織と技術の細部」が目的となっている印象がある。

 このような「新幹線ファシズム」のもとでは本来、「定時運行」という「手段」に過ぎないものが、「目的」となり、「乗客の安全」という本来の「目的」が二の次になってしまう恐れがある。今回の「14センチの亀裂」は、それを象徴する出来事のような気がしている。

 もちろん、それはJRだけの責任ではない。戦前の教育を引きずって、「鉄道は遅れないのが当たり前」だと思い込む我々ユーザーが求めるからこそ、JRも必死にそれに応えようとする。トラブル頻発で指摘される人手不足や技術継承の問題があっても、気合いと根性で何とか「世界一の定時運行」をキープしようとするのだ。

 日本人一人ひとりが、「新幹線ファシズム」の本当の意味での「真犯人」なのではないか。