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元「広告批評」編集長・河尻亨一の「月刊マーケティング時評」

ソーシャルが生み出す、これからのビジネス、
マーケティング、クリエイション

対談●ITジャーナリスト・イケダハヤト×河尻亨一

河尻亨一 [元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]
【第3回】 2012年2月21日
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河尻 つまり、「社会的(貢献)=目的」と「社交性(つながり)=手段」という二つの意味での“ソーシャル”が重なるマーケティングの領域があり、イケダさんは主にそこをフィールドにしているということですね。具体的な例で言うとどういったものでしょう。

イケダ たとえば、いま僕がお手伝いしているものとして「産後ケア」の活動があります。女性は子どもを出産すると心身に高い負担がかかり、「産後うつ」に悩まされる人も多いようです。「マドレボニータ」というNPOは専門のインストラクターが産後ケアプログラムを提供することで高い評価を得ているのですが、産後ケアに対する社会的認知はまだ高いとはいえません。

 そこでこのNPOは『産後白書』という啓発のための資料をつくっているのですが、それを広めるためのマーケティング予算は潤沢ではありません。そこでFacebookページをつくってそこを情報発信とやりとりの場にしたり、海外に向けて資料の英訳化を進めたりしています。

 もう一つ挙げると、中古車流通のガリバーによる「タッグプロジェクト」も非常にやりがいのある活動ですね。この会社は、被災地支援の取り組みとして3月11日の次の日にクルマ1000台の寄付を決めたのですが、あの混乱状況のなかでどこに寄付をすればクルマを有効に活用してもらえるかがわからなかったわけです。

 そこでまずはソーシャルメディアで100台の寄付先を決めましょうということになり、「greenz.jp」というメディアが運営する「Blabo!」という掲示板のようなサービスを使って寄付先を募ったところ、1~2週間で提供先が決まりました。この活動は今も継続しています。

河尻 今のはイケダさんご自身が関わっているプロジェクトですが、ほかに注目している非営利活動なり、ビジネスモデルなり、事例をいくつか挙げていただくとすれば?

イケダ たくさんありますね(笑)。さきほどお話した「greenz.jp」は非常に面白いつくり方をしていると思います。社会的課題を解決するポジティブなアイデアを紹介するメディアで、今ユニークユーザーが月間15万人に達しているそうです。

 書籍やイベントも好評でスクール事業(green school Tokyo)も行っています。主なスタッフが3~4人ですからそれで利益が出ます。コミュニティとしてのあり方や運営のやり方を見ていて、「greenz.jp」に近い部分があると思うのは「TechWave」。こちらはスタートアップ(起業)支援系のウェブメディアです。

  ほかに「クラウドファウンディング」のトライアルにも注目しています。だれかが自分の実現したいアイデアをウェブ上でプレゼンテーションし賛同者たちから資金を募る仕組みで、海外では「Kickstarter.com」などさまざまな成功例があります。日本での先がけとして「READYFOR?」が有名です。

「Grow!」のような“ソーシャル投げ銭”のサービスも、そのコンセプト自体に共感性があって応援したい気持ちになります。発信者が自分の制作したウェブ上のコンテンツ(記事なども含む)に「Grow!」ボタンを設置するのですが、ビジターがそれを押すことで発信者に1ドルの寄付をすることができるんです(寄付側は事前にポイントを購入)。

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河尻亨一
[元「広告批評」編集長/銀河ライター主宰/東北芸工大客員教授]

1974年、大阪市生まれ。99年、早稲田大学政治経済学部卒業。お茶の水美術学院講師を経て、2000年より雑誌「広告批評」(マドラ出版)に在籍。08年、編集長就任。10年、同社退職後、雑誌・書籍・ウェブサイトの編集、企業の戦略立案およびPRコンテンツやイベントの企画・制作を手掛けるほか、講演活動なども行っている。

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元「広告批評」編集長・河尻亨一氏が、ヒット商品、イケてる人や企業、話題の現象……などなど、「ヒト・モノ・コト」にまつわる旬のテーマをマーケティングの視点から読み解く時代批評です。

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