しかし、K課長は、とっさに「結局、何が言いたいのかポイントを説明してほしい」と言ってしまいました。これは大きな間違いです。

 確かに、ビジネスシーンにおいて、言いたい内容をまとめられていない状況で相談するのは、少々、常識外れかもしれません。しかし、Aさんのように、かなりのストレスが溜まっている状態のときには、思っていることが山積しているので、本人は整理して話しているつもりでも、つい感情的な話し方をしてしまったり、主旨の分からない話をしてしまったりします。

 実は、人が相談するときの心理には二つの状態があり、一つ目は、「明確な答えがあって、どちらかを決めたい状態」、そして二つ目は、「自分でも何に悩んでいるのか分からず、どうすればいいのか分からない状態」です。意外にも、人が相談するときは、二つ目の心理状態のときが多いのです。

 ビジネスシーンにおける相談という場面では、不明瞭な複数の問題を体系的にまとめていくと、一つの大きな問題にたどり着くことが多々あります。

 そのため管理職には、混在する出来事と向き合って問題点を明確にしていく能力が求められますし、そこから新たな課題を発見し、イノベーションにつなげていくという視点も必要です。また、そうすることで、チームメンバーからの信頼も得られるのです。

傾聴技法の一つである
「意味への応答」が効果的

 ここでは、産業カウンセラーが使う「傾聴技法」の一つ、「意味への応答」をご紹介します。

「意味への応答」とは、相手の話の中に出てくる「事柄」と「感情」の結びつきを理解して、伝え返すことです。これにより、話の真意を明確化することができます。では、先ほどの会話例を通して見ていきましょう。

Aさん 「今日はお時間をいただき、ありがとうございます。いろいろとストレスが溜まっているので、支離滅裂に話してしまうかもしれませんがお許しください」

K課長 「話すことがまとまっていない状態だけれど、聞いてもらいたい気持ちがあるという理解で聞けばいいんだね」