さらに米朝首脳会談を行うこと自体が米国と北朝鮮の直接交渉で決められたわけでも、何らかの文書による合意があるわけでもない。

 韓国を通じての合意であり、北朝鮮の非核化の意図もすべて口頭での伝言の形をとっている。通常の外交であれば到底考えられないことだ。

 北朝鮮はトランプ大統領の非伝統的な外交の手法を意識していたのだろう。しかし、北朝鮮が言を左右し、会談自体がなかなか開催されないというリスクは残る。

 ただ、トランプ大統領と金正恩委員長という両国のトップを巻き込むものだけに、北朝鮮も、失敗すれば後がないことは感じているはずだ。

 トランプ大統領の判断基準は定かではなく、振幅も大きく、時として衝動的である。ポンペオ次期国務長官も対北朝鮮強硬派で知られている。失敗すれば、米国による軍事行動の可能性が急速に高まる。

 首脳会談の成否は、北朝鮮が真摯に非核化に取り組むか否かが最も重要な鍵であり、このことは、南北首脳会談を含め、北朝鮮に明確なメッセージを伝え続けることが重要だ。

 この意味でも対北朝鮮経済制裁や米韓合同演習などはきちんと実施していく必要がある。

 同時に関係国、とりわけ韓国、中国、米国、日本の間の緊密な連携が必要であり、万が一に備えた危機管理計画を練っておくことも重要になる。

 準備があることこそが、北朝鮮が無謀な行動に走らず真摯に非核化の道を進むことを可能にする抑止力となるはずだ。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)