世界中どこに行っても、鉄道の駅や車内には乗客に注意を促すさまざまなポスターが張られている。
例えば、米ニューヨークの地下鉄では次のような注意をよく見掛ける。「ポールは安全のためにあります。あなたの最新のルーティンのためではありません」(写真)。車内に乗客がつかむためのポールが設置されている。これを使って毎日アクロバティックな決め技(ここでいう“ルーティン”)を見せる人がいるため、このような注意喚起が行われている。
米ワシントンの地下鉄では、強引に乗ろうとする乗客への警告のポスターが見られた。「ドアをこじ開けると、あなたは最後には手や足を失うでしょう」。自己責任として突き放している感じもある。
一方、東京の駅によく張られているのは、酔っぱらって千鳥足で電車に接触したり、ホームから落ちたりしないよう注意するポスターだ。2016年度の関東運輸局管内のホームで起きた人身事故の6割は、酒に酔った乗客によるものだったという。
そういえば、米国や欧州でそのようなポスターを見た記憶が筆者にはほとんどない。自己責任と見なされているのだろうか。あるいは、海外の都市の多くは治安があまり良くないので、泥酔状態では安心して電車に乗ることができないからかもしれない。
ところで、最近読んだ『日本の鉄道は世界で戦えるか』(川辺謙一著、草思社)は、日本の鉄道業界の特殊性を認識させてくれる興味深い本だった。