よく「こういうデニムは東京で売ったら売れるよ」と言われる。期間限定で売ることはあっても、東京のど真ん中に店を持ったりはしない。尾道のデニムショップに来てもらって「商品をよく見て買ってほしい」(同)という。

 ネットでも売らない。「オンラインでピッと買われるとさみしい。フリマアプリで中古品を買うような感覚で買われたくない。商品には傷もあるし、履いてもらう方によってデニムには個体差も出るので、しっかり見て買ってもらいたい」(同)。

 あくまでも「この店に来ないと買えない」ということが必要であり、デニムを介して観光につなげたいという思いが強い。

4月からはネットでも買える
新品デニムも販売

「尾道デニム」のブランドを高める
「尾道デニム」のブランドを高めるのが課題

 今年4月からはプロジェクト用のオリジナルのデニムを開発、発売した。

 これまで5年にわたるプロジェクトの活動のなかで、履いてもらっているいろんな職種の人たちとの会話から蓄積した「こうしたらいい」、「こんなデニムがあったらいい」という声を反映させ、備後地方のデニム生地メーカーと開発、新品デニムとして売り出した。

 ストレートデニムの範囲で少しだけ腰周りから膝のフィット感にゆとりを持たせたり、フロントポケットの袋布には瀬戸内の海をイメージした波柄ヘリンボーンを開発したりと細部にこだわっているのが特徴だ。これはネットでも買える。

 いよいよプロジェクトのオリジナルの新品デニムも作って、今後は尾道デニムのブランドを高めていく局面に入っていく。

 こうした着古したデニムを核に町おこしを展開しているのは例がない。現在デニムを履いている約100人の市民は、あまり町おこしを意識しないで参加し、貢献していることになる。

 市民が自然に参加できるプロジェクトともいえるが、デニムを履いていた人、デニムを売る人、デニムを買う人が、履いていた人の仕事、生活のストーリーでつながっている。新たな価値創造の手法として注目されそうである。