ヤマトホールディングスの子会社で、顧客への水増し請求が問題になっている。この一件のみならず、近年は神戸製鋼や東芝、電通など、日本を代表する大企業で粉飾や水増し請求などの不正が次々に発覚している。そこには、昭和型企業理念をいまだに引きずっている日本企業に共通する闇がある。(ノンフィクションライター 窪田順生)
個々人の社員の独断はあり得ない
ヤマト水増し請求の闇
「宅配クライシス」にあえぐ流通界の巨人が、今度は「水増しクライシス」でも足元が揺らぎはじめている。
ヤマトホールディングスの子会社・ヤマトホームコンビニエンス(以下、YHC)が法人向け引越し代金を水増し請求していた問題だ。当初は4.8万件で17億円といわれていた水増しが、5年前までさかのぼって調査をしたところ、2倍以上の31億円にも上ることが分かったという。
この問題を指摘した同社の元支店長・槙本元氏は先月27日に国土交通省で会見を行い、過大請求は2010年ごろから行われていて、「17億円より膨らむはず」という見方を示していたが、まさにその通りになったわけだ。この流れでいけば、2010年からざっと40~50億円の水増し請求が行われていた可能性もある。
ヤマトホールディングスの山内雅喜社長は、「会社として組織としてこのような指示をしたことはない」(日本経済新聞2018年7月24日)と釈明をしているが、個々の社員が「今月は目標未達で苦しいからちょっと上乗せしちゃえ」と魔が差すくらいでは、ここまで膨大の数の不正にはならないはずだ。
指示はしていないという言葉を信じるのなら、YHCという組織全体が「どうせお客もそこまで厳しくチェックしないんだから、乗っけられるだけ乗っけておけ」というボッタクリ文化に毒されていたとしか考えられないのだ。
では、なぜここまでのモラルハザードが起きてしまったのか。
調査委員会が原因を究明しているということなのでそれは待ちたいが、個人的には恐らくその調査報告書にも掲載されないであろう、「根本的な原因」がひとつ思い当たっている。