将棋界では藤井聡太七段が世間をにぎわせているが、囲碁界にもとんでもない「怪物」がいる。それが18歳の新鋭、芝野虎丸七段だ。昨年行われた第26期竜星戦で優勝し、全棋士が参加する棋戦でのタイトル獲得の最短記録保持者となった芝野七段は、4月29日に行われた日中竜星戦でも、中国ナンバーワン棋士の柯潔(かけつ) 九段を破って優勝するという偉業を達成した。そんな彼の素顔や、日本人棋士が世界戦で勝てない理由、打倒・井山裕太六冠への意気込みなどを語ってもらった。(清談社 布施翔悟)

きっかけは「ヒカルの碁」
小学5年生でプロ養成機関に

芝野虎丸七段相手が誰でも普段通り打てる――自身の強みをそう分析する芝野虎丸七段。目の前の盤面にだけ集中できるメンタルは、日本人棋士の中では異色である

――囲碁ファンの間では、芝野七段は対局中に石音がとても静かなこと、それからポーカーフェースで有名ですね。

 大きい音を立てると迷惑になってしまうかなと思って、自然に静かになりました。世界的にも音を立てないのがマナーらしいです。ただ、依田先生(依田紀基九段。石音が大きいことで有名)が石音を立てなかったら、逆にどうなの?とは思います(笑)。

――では、そもそも囲碁を始めたきっかけから教えてください。

 5、6歳ぐらいのとき に、父親が『ヒカルの碁』のTVゲームを買ってきて、家族で覚えたのがきっかけです。最初の方は誰かに教わっていたわけではなく、ただ楽しく打っていただけで、ヒカルの碁のゲームをしばらくやっていた記憶があります。あとはネット碁を打ったり、兄(芝野龍之介初段・現プロ棋士)と2人で打ったりですね。兄とは今も仲が良くて、移動中にしょっちゅうTwitterでつぶやいているので、それをのぞきこんで「何つぶやいてるの」ってツッコミを入れたり(笑)。共著で『アルファ碁Zeroの衝撃』(マイナビ出版)という本も出しました。

――本格的に囲碁を始めたのはいつぐらいでしょう?

 小学校3年生の秋頃に「洪道場」という囲碁道場に通い始めました。その後、小学5年生で院生(プロ養成機関)に入りました。それ以後は、基本的には起きてから寝るまで囲碁の勉強だけの日々です。9時に起きて22時ぐらいに寝るので、食事などを抜かせば10時間ぐらい 。一番時間をかけるのは、インターネットでの対局と、打ち終わった碁の研究です。たまにダラダラする時間もありますが(笑)。