発売2ヵ月で10万部を突破したベストセラー『転職の思考法』著者の北野唯我さんと、NewsPicksBook編集長として数々のヒット作を手がけながら、8/28には自らの著作『死ぬこと以外かすり傷』(発売前にして3刷3万部、Amazon総合ランキングでも1位を獲得)を書き上げた幻冬舎の箕輪厚介さん。
今最も勢いのあるアラサービジネスマン二人が「個人の価値が問われる時代」をテーマに対談!その様子を全3回にわたってお送りします。
初回は仕事中に「空気を読み合う」のが旧サラリーマン「真実を言う」のがネオサラリーマン、という新しい区分が飛び出して……?
構成:篠原舞 撮影:池田実加(ともに箕輪編集室)

「本当のことを言えるかどうか」が、新旧サラリーマンの分岐点になる

箕輪『転職の思考法』読みました!全然違う本に見えて、これ、僕の『死ぬこと以外かすり傷』とメッセージは一緒ですよね。僕はただひたすら「飛べ!」って言って行動を促してるけど、北野さんの本はその「飛ぶ方法」をエピソードをもとに解説してる。

北野:そうなんです。目指すところは似ていますよね。たとえば、共通して扱っているのが、いかに「仕事の中で本当のことを言うか」というテーマ。ふだんTwitterを見てても思うんですが、箕輪さんって本質的には「本当のことを言うとはどういうことか」を世に問う存在ですよね。みんなが言いづらいことを言ってしまうというか。

「周囲がざわつく真実をみんなの前で言えるか」がビジネスパーソンの価値を決める<br />【箕輪厚介×北野唯我】
北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ハイクラス層を対象にした人材ポータルサイトを運営するワンキャリアに参画、サイトの編集長としてコラム執筆や対談、企業現場の取材を行う。TV番組のほか、日本経済新聞、プレジデントなどのビジネス誌で「職業人生の設計」の専門家としてコメントを寄せる。2018年6月に初の単著となる『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』を出版。

箕輪:まさに! 今日もこんなツイートをしたらすごいバズったんですよ。
「いっせのせで、みんなが意味ないと思いながらやってる仕事、価値ないと思いながら作ってるものを作ることをやめて、自分の根源的な偏愛と向き合ったり、心から好きなことだけをやるようになったら世の中よりイノベーティブでポジティブになる気がする。それを促すのが俺の仕事だ」

「周囲がざわつく真実をみんなの前で言えるか」がビジネスパーソンの価値を決める<br />【箕輪厚介×北野唯我】
箕輪厚介(みのわ・こうすけ)
1985年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2010年双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。広告部に籍を置きながら雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊しアマゾン総合ランキング1位を獲得。2014年、編集部に異動。『たった一人の熱狂』(見城徹)、『逆転の仕事論』(堀江貴文)を編集。その後幻冬舎に移籍し、2017年にNewsPicks Bookを立ち上げ、編集長に就任。『多動力』(堀江貴文)、『お金2.0』(佐藤航陽)、『日本再興戦略』(落合陽一)、『人生の勝算』(前田裕二)などを編集。創刊1年で100万部突破。また1300名の会員を擁する日本最大級のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。既存の編集者の枠を超え、様々なコンテンツをプロデュースしている。

北野:僕は2020年を境に、サラリーマンは「本当のことを言えるかどうか」で新旧タイプが分かれる気がしているんですが、箕輪さんはどう思います?

箕輪:まったくその通りだと思います。『死ぬこと以外かすり傷』の中でも書きましたが、空気の読み合いで生きているのが旧サラリーマンだとしたら「ぶっちゃけこうですよね?」と真実を言えるのがネオサラリーマン。これからの個人の時代には、圧倒的に価値があるのはネオサラリーマンですよね。

北野:旧サラリーマンは「お前、本当のことを言うなよ!」ってディフェンスしあう存在。でも、箕輪さんは本当のことを言うから「いや、そうそう。よくぞ言ってくれた!」というネオサラリーマンの支持を受けているんですね。

箕輪:結局、そのほうが仕事相手とも関係性は深くなりますからね。僕は相手が誰であれ、思っていることを言うようにしています。嫌われるとか、仲が悪くなるとか関係ない。じゃないと、編集者と著者という関係を超えた深い関係なんて築けないし、本質的な仕事にならないですよ。

北野:でも、本当のことを言うと周囲がざわつきますよね。『死ぬこと以外かすり傷』の中に新人研修の話があったじゃないですか。マナー研修の内容がくだらなくて、日報に「マナー研修というのは名ばかりのただの茶番劇だった。こんな無駄なことは来年からやめたほうがいい」と正直に書いたら怒られたという。

箕輪:あのときは1時間くらい怒鳴られて、大人ってこんなに怒るんだってびっくりしました。北野さんは、そういうこと言わなそうですよね。

北野:いや、僕も博報堂の新入社員の時、同じようなことをしたんですよ。研修で「何かを再生しなさい」ってテーマが与えられて発表する場があったから、他の人が「本を再生します」とか「畳を再生します」とかって言う中、僕は「博報堂を再生したほうがいいんじゃないですか」って発表したんです。

箕輪:え、意外! 僕と同じタイプじゃないですか。

北野:僕が入社した2010年、博報堂が初めて赤字を出したんです。だから、博報堂を再生すべきっていうのは「本当のこと」じゃないですか。でも人事部はざわつきましたね。「なんだこの生意気な奴は」って。

箕輪:わかる! でも、これでざわつくなんて、どんだけ空気の読み合いで生きてるのかと。僕が書いた日報も、北野さんの発表も、本当のことを言って怒られるなら、日報なんて「今日の研修は素晴らしかった」って言うしかない。研修が意味があるかどうかの議論はあっていいんですよ。でも「そういうことは日報に書くんじゃない」っていうのは意味不明ですよね。そのときに感じたのが、サラリーマンというのは「こういうのが正しいよね」とか、「こうあるべきだよね」という範囲を逸脱しないように「演じている」グループなんだなということ。

北野:そう、みんなわかってるんですよね。

箕輪:しかも、オフィスで本当のことを言うと「お前何言ってるんだよ」って驚くくせに、帰り道や飲み会になると「実は僕も箕輪君みたいに思ってたんだよね」とか言い出すの。オフィスと外では意見が変わるんですよね。僕としてはそっちのほうが驚くわと(笑)

「周囲がざわつく真実をみんなの前で言えるか」がビジネスパーソンの価値を決める<br />【箕輪厚介×北野唯我】

要は、彼らは会社というものに手も足も口も奪われてしまっているんですよ。これをやれって言われたことにただ従うだけの存在。それよりも本当に自分が思ったことを言って、自分の手と足を動かして、自由に楽しくやった方がいい。

北野:いきなりは難しくても、それこそ少人数の飲み会などで「ぶっちゃけこう思います」と発言してみるのもありですよね。本当のことを言うと怒る人もいるけど、好きになってくれる人もいますから。意外と社内にファンが増えてくる。こうやって少しずつ「本当のことを言う練習」をしないと、いつか本当に「忖度しかできない人」になってしまう。

上司ではなく、マーケットを見て仕事をしろ

北野:これは『転職の思考法』にも書いたことなんですが、「本当のことを言えるか」どうかは「どこを見て働いているか」で決まりますよね。

箕輪:「『上司を見るか、マーケットを見るか』でビジネスパーソンとしての価値が決まる」ってやつですよね。

「周囲がざわつく真実をみんなの前で言えるか」がビジネスパーソンの価値を決める<br />【箕輪厚介×北野唯我】図1『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む転職の思考法』(ダイヤモンド社)P31より

北野:そう、上司の顔色を伺って発言している人は会社が潰れたら生きていけないけど、社会を見て働いている人はどこでだって生きていける。結局マーケットを見て「いつでも転職できる」っていう状態をつくれていれば、本当のことが言えるはずですから。

箕輪さんは、前職の双葉社で社内の反対を押し切り与沢翼さんの雑誌『ネオヒルズジャパン』の制作を勝手に受注したり、最初から上司ではなくマーケットを見ていましたよね。それはなぜだったんですか?

箕輪:自分が好きですからね。だから上司に嫌われても実際的には関係ない。「このプロジェクトは僕がやったんだ」って言えるのが大事なんですよ。たとえば上司から引き継いだ1000万円の案件を僕が1100万円にしても全然嬉しくない。それよりも、売り上げが小さくても独力で新規開拓したり、与沢翼の雑誌みたいなトンデモ案件をゼロから手がけて「これは箕輪がやった仕事だ」って言われるのが好きなんですよね。だからもともと上司や会社のほうは見てなかったですよ。マーケットと言うか、世間からどう思われるかの方に圧倒的に興味があった。

空気を読んだうえで破れ、とことんまで感情を見ろ

北野:大学時代に尖っていた人たちが入社後に周囲に揉まれて丸くなるって、よくある話じゃないですか。箕輪さんは「出版業界は終わってる」と言ったり、派手なサングラスをかけてイベントに参加したり、言動が破天荒ですよね。あえて聞きますが、どうして上司に潰されなかったんですか?

箕輪:「実は空気を読んでる」からだと思いますね。人がどれくらい嫌がる行為か、反発があるか、嫉妬を買うか、全部わかった上で発言したり行動したりしてる。本当のことを言うけど、「感情」は見てますね。不快にさせてもいいやって思ってあえて突破するときもあるけど、仲間に嫌な思いはさせたくないから、そこは考えています。変化を拒む人や知らない人には、なんて言われてもいいけど、同じ船に乗ってほしい人には同じ気持ちを持ってもらいたい。

北野:空気を読みながら、本当の事を言うのが重要だと。でも、本当のことを言うと嫉妬されますよね。僕、日本で今一番嫉妬されているんじゃないかと思う人を3Mと勝手に呼んでいて。

箕輪:3M?

北野前澤友作さん(株式会社スタートトゥデイ 代表取締役社長)・前田裕二さん(SHOWROOM株式会社 代表取締役社長)・箕輪厚介さんです。全員、苗字が「M」ですよね。

箕輪:僕を入れてくれるのはありがたいけど、女優と付き合ってないよ!(笑)

北野:箕輪さんは本当のこと、たとえば年収とかも言っちゃうじゃないですか。僕は嫉妬されるのが嫌なタイプですが、箕輪さんは別に気にならないんですか?

箕輪:褒められるより嫉妬される方が嬉しいです。自分が知りもしない同業者に嫉妬されるのとか、最高ですよね(笑)。でも、僕は同じ船に乗ってる人を嫉妬させたくはないんですよ。仲間を嫌な気持ちにさせたら駄目だなと。愛嬌とか嫌味の無さっていうのは大事ですよね。でも、自分より先輩であったり力がある人からの嫉妬は、成長するためのきっかけにもなりますね。

北野:なるほど。嫌味なく本当の事を言う必要があると。

箕輪:そうですね。結局人間って、感情が大事なんですよ。『死ぬこと以外かすり傷』の中にも「金と感情のダークサイドスキル」と書きましたけど、本当のことを言う上で、感情のコントロールは意識した方がいいと思います。

(続く)