爆発パターン4
プラットフォームは企業を「転回」させるようになる

 大多数のプラットフォームの価値は、ユーザーのコミュニティから生まれる。そのため、プラットフォーム・ビジネスを行う場合は、企業活動の焦点を内部活動から外部活動へと移さなければならない。

 その過程で、企業は「転回現象」を経験する。マーケティングからIT、オペレーション、戦略に至るまでのあらゆる機能を、徐々に「外部」の人材、資源、機能に委ねるようになる。それら外部の力を活用して、従来からの内部の人材、リソースを補完したり、代替したりするのだ。

 この転回プロセスを説明する言葉は、ビジネス機能によってそれぞれ異なる。マーケティングを例に取ると、メッセージ配信システムを規定する主な用語は、ブロードキャストからセグメンテーション、さらにバイラリティ(クチコミの拡散)や社会的影響へ、プッシュからプルへ、アウトバウンドからインバウンドへと移行してきた。

 コカ・コーラCIOのロブ・カインが語るように、こうした用語の変化はすべて、以前は社員や広告代理店が広めたマーケティング・メッセージが、今や消費者自身によって拡散されていく事実を示唆している。言い換えると、プラットフォームが席巻する世界におけるコミュニケーションの転回的性質が、これらの用語に反映されているのだ。

 ITシステムも同様に変化している。たとえば、バックオフィス用ERP(企業資源計画)システムからフロントオフィスのCRM(顧客リレーション管理)システムへ、そして最近では、ソーシャルメディアやビッグデータを使ったオフィス外での実験へと進化している。これも、内部中心から外部中心へと企業活動の焦点が変化している例だ。

 ファイナンスにおいても、保有資産の株主価値や割引キャッシュフローから、社外で起こるインタラクションの株主価値や役割へと焦点が移っている。

 オペレーション管理も、在庫やサプライチェーン・システムの最適化から、自社が直接的にコントロールしない外部資産の管理へと移行してきた。ハバス・メディアの戦略担当副社長であるトム・グッドウィンは、この変化を端的に説明している。

「世界最大のタクシー会社であるウーバーは車両を所有しない。世界で最も人気のあるメディアであるフェイスブックはコンテンツを作成しない。最も時価総額が大きい小売業者のアリババは在庫を持たない。そして、世界最大の宿泊サービスを手掛けるエアビーアンドビーは不動産を所有しない」。コミュニティがこれらの経営資源を提供するのだ。

 戦略の対象も、独自の内部の経営資源を管理して競争障壁を築くことから、外部の経営資源を統合して魅力的で強力なコミュニティを巻き込むことへと移行してきた。イノベーションはもはや社内専門家や研究開発部門の担当領域ではなく、プラットフォーム上の独立した参加者が考え出したアイデアや、クラウドソーシングを通じて生み出されるものとなったのだ。

 ただし、外部の経営資源は、内部の経営資源と完全に置き換わるというよりも、補足的に用いられることのほうが多い。しかし、プラットフォーム企業で強調されるのは、製品の最適化よりもエコシステムのガバナンス(統治)であり、内部の従業員を管理することよりも外部のパートナーをその気にさせることなのだ。