カップルが恋愛感情をすり減らしてしまう理由

日中の行動に引きずられ、ジョアンは自宅でも無意識に男性的な行動を、ジャックは女性的な行動をとろうとする。ふたりは気がつかないうちに、互いに距離をつくり、ストレスを増やしている。だが、男らしさと女らしさのバランスについて理解することで、ジャックはまずパートナーの話に耳を傾け、その後でその日の気分を分かち合える。ジョアンも心からリラックスし楽しめるような形で、洞窟タイムを過ごせるようになる。

これは、従来の男女の役割に戻れということではない。生物学的な男女の違いを受け入れながら、ふたりの事情に合わせて相手のニーズを理解することが大切なのだ。

火星人と金星人の成分の割合は人によって異なり、正解も不正解もない。パートナーと気持ちを分かち合いたい人もいれば、一人で過ごす時間を大切にしたい人もいる。そのうえで男女の違いを理解することで、必要なサポートを与え合えるようになる。

愛する人への情熱をいつまでも失わないために

自由に役割を選べるようになると、従来は十分に発揮できなかった自分の特性を表現できるようになる。だが、逆にそれまでの自分の特性が抑えられることもある。男でも女でも、男らしさに偏りすぎると女らしさが、女らしさに偏りすぎると男らしさが抑えられてしまう。この状態が続くとストレスが増え、ただでさえ大変な毎日がさらにストレスフルになる。

ジョアンは会社では厳しい競争にさらされて忙しく働き、女らしい豊かな感性や協力的な側面を抑えている。家で子どもたちの世話をしているジャックは男らしさを抑えている。
職場で女らしさを抑えているジョアンは、家に帰ってもストレスを感じたままだ。

一方、ジャックは“一人で家族を養わなければならない”というプレッシャーから解放され、子どもたちと一緒に時間を過ごせる自由があり、人の世話をするという女性的な側面は十分に表現できている。だが男らしい競争的な側面を抑えているために、一日が終わる頃には疲れ、パートナーへの依存心が生まれてしまう。

私が提案する新たな知恵は、ジョアンとジャックのような現代的なカップルだけではなく、男は外で働き、女は子育てをする、という伝統的な形態のカップルにとっても、男らしさと女らしさのバランスをとるために役立つはずだ。

かつては、外で仕事をする男は男らしく、家で子育てをしている女は女らしく振る舞うことが求められた。このように内なる自分の一部を抑えていると、真の自分を表現して生きることが難しくなる。

幸い、男性と女性に対して社会が求めるものが変わったことで、男らしさ、女らしさのバランスはとりやすくなった。たとえば夫の給料で生計を立て、自宅で子育てをすることを選んだ女性は、パートタイムの仕事をすることで、内なる男らしさを表現できる。同じく、一家の稼ぎ手である男性も、仕事量を減らす、趣味の時間を楽しむ、子育てにもっと参加する、といった形で女らしさを表現できる。

しかし、こうした変化によって、内なる側面の別の部分が抑えられることもある。定年退職をした男性は、日々のやりがいのある仕事から離れ、楽しみ、くつろぐことを第一に生きようとする。だが、そのことによって男らしさを発揮できず、ストレスを増やしてしまう。引退して、ようやくストレスから解放されると思っていたのに、だ。このストレスは健康に深刻な影響を及ぼす。退職後の3年間で、男性の心臓病の発生リスクは急上昇する。

役割が変われば、カップルが相手に求めることも変わる。当然、そのことを理解していかなければならない。適切な愛情を与えれば、パートナーはバランスをとりやすくなる。