トランプのNAFTA見直しには日本車にとって「もっと危うい裏事情」が?
トランプ大統領がNAFTAの見直しを推し進めるなか、貿易上の不利益を被る日の丸自動車は戦々恐々だ。しかし、日本が危惧するよりもさらに危うい「2つのウラ」が今回の交渉には見える Photo by Keiko Hiromi

トランプのNAFTA見直し交渉で
日本が被る影響に「さらに悪い見通し」

 アメリカのトランプ大統領はメキシコとの二国間協議を妥結させ、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しをメキシコ政府にのませることに成功した。メキシコからアメリカへの自動車の輸入に関して、これまでアメリカ、カナダ、メキシコの3国での部品調達率が62.5%であれば関税はゼロだったが、今後その基準がアメリカとメキシコの2ヵ国で75%に引き上げられる。

 日本の自動車メーカーは北米市場で販売する自動車を、アメリカよりも賃金コストが低いメキシコやカナダで生産し、アメリカへ輸出してきた。NAFTA域内調達率は62.5%のハードルを越えているのでこれまでのルールでは関税はゼロだった。それが今のままでは、メキシコからアメリカへの輸出には関税がかかることになる。

 このまま事態が進むと、日本が危惧する最悪のシナリオにつながっていく可能性があるため、日本の自動車メーカーは警戒を強めている。そして、この話にはさらに「ウラ」がある。そのことも含め、NAFTA再交渉に関する動きはまったく楽観できないという情報を、私が考えられる範囲でお伝えしたい。

 日本の考えていた「最悪のシナリオ」とは、保護貿易政策を露骨に進めているトランプ大統領が、鉄鋼に続き自動車についても高い率の関税をかけるのではないかということだった。そうなると、北米市場で大きく稼いでいる日本の自動車メーカーは大きな打撃を受けることになる。前述したように、NAFTA加盟国であるカナダとメキシコには日本メーカーの生産拠点が多くあるが、そこでの生産にまで関税がかけられたら、日本メーカーは価格競争力を失ってしまう。

 日経新聞によれば、日本のシンクタンク各社はその影響が非常に大きいと試算している。みずほ総研は、20%の関税がかけられたら乗用車分で約8800億円、自動車部品では約4200億円のコスト負担増になると試算している。これがNAFTAを含めて20%の関税になると、大和総研によれば1.75兆円の負担増になるという。

 当然、そのコスト増は自動車に価格転嫁するしかないが、SMBC日興証券の分析によれば、その影響で日本の自動車輸出は20万台減少するという。

 この問題が今後さらに悪い方向に進むのではないかと筆者が考える理由は、2国間交渉がトランプ大統領の得意技だからだ。グローバルな枠組みではなく、1対1なら交渉力が強いアメリカの立場が生かせる。それも、トランプ氏の交渉は一番弱い部分から始めるという特徴がある。