短期志向の「株主至上主義」から脱却し
社会的ミッション起点の経営を

出所:百嶋徹「コーポレートガバナンス改革・ROE経営とCRE戦略」ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』(2017年3月29日)に掲載した図表3を百嶋徹がデータ更新
※企業の規模は、資本金を基準に大企業(資本金10億円以上)、中堅企業(同1億円以上10億円未満)、中小企業(1億円未満)の3つに区分

 百嶋上席研究員の分析によれば、財務省『法人企業統計』から、例えば日本の製造業の2004 年度以降のROE(自己資本利益率)を企業規模別に算出すると、中小企業が大企業・中堅企業を概ね下回っているという。一方、大企業を見ると、2017年度にROEが営業外費用・特別損失の減少や、税効果会計による税金費用の減少効果など一時的な増益要因とみられるものもあって、10%超まで上昇したが、売上高営業利益率は5.9%にとどまっている(図1)。

「中小企業の低ROEの主因は、ROS(売上高利益率)の低さにあります。また大企業のROSも平均的にグローバル水準に到達したとは言い難い。もう一段の収益性向上が必要でしょう」(百嶋上席研究員)

 中長期的にROSを上げるためには、労働や設備への先行投資が欠かせない。しかし、2005年前後を境に、日本企業の多くは株主利益の最大化を最も重要と考える「株主至上主義」へ拙速に傾いた、と百嶋上席研究員は指摘する。

「日本の大企業の多くは、四半期業績の開示義務づけや外国人投資家の台頭など、資本市場における急激なグローバル化の波に翻弄されました。そのため、労働や設備への分配を削減することで短期収益を上げて株主配当の資金を捻出する、といったバランスを欠いた付加価値分配に舵を切ってしまいました」(百嶋上席研究員)

 拙速な株主至上主義は、経済的リターンありきの経営になりがちだ。しかし、目先の利益追求を優先する企業経営のショートターミズム(短期志向)は、縮小均衡を招くだけで継続的なGDP成長にはつながらなかった。そもそも「企業の存在意義や社会的責任は経済的リターンありきではなく、社会課題を解決し社会的価値を創出すること、すなわち社会的ミッションを実践することにこそあるべき」と百嶋上席研究員は言う。

「欧米の先進的なグローバル企業にはそうした考え方が散見されますが、“社会的ミッション起点のCSR(企業の社会的責任)経営”を実践するには、従業員、顧客、取引先、株主、債権者、地域社会、行政など、多様なステークホルダーと高い志を共有することが必要です。実は『コーポレートガバナンス・コード』にも、『会社の持続的成長と中長期的な企業価値創出のために、多様なステークホルダーとの協働に努めるべき』と基本原則2に明記されています」(百嶋上席研究員)

 外部性を持つ不動産は、とりわけ社会性に配慮した利活用が欠かせない。ワークプレイスやファシリティが立地する地域社会との共生を図り、よき企業市民として地域活性化に貢献することが重要だ。「CREは事業を通じた地域活性化や社会課題解決など、社会的ミッション起点のCSR経営を実践するためのプラットフォームの役割を果たすべきなのです」と百嶋上席研究員は主張する。