生活保護とケースワーカーに見る
フィクションと現実の違い
9月中旬、関西テレビのドラマ『ケンカツ』こと『健康で文化的な最低限度の生活』が全10回の放送を終えた。柏木ハルコさんによる同名のコミック作品は、2014年より漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』で連載されている。単行本は6巻まで刊行されており、電子書籍を含めて70万部以上の売り上げとなっている。
今回は、原作者である柏木ハルコさんの思いを紹介したい。柏木氏はドラマ化にあたり、「誤った情報を描かないよう監修をつける」「視聴者の偏見を助長するような表現はしない」という2点を条件に承諾したという。原作コミックおよびドラマには、ケースワーカーの全国組織である「全国公的扶助研究会」が協力し、ドラマは同会副会長であるベテランケースワーカーの衛藤晃氏が監修した。もちろん、柏木さんの要請は実現された。
とはいえ、テレビドラマは当然ながらフィクションだ。現実そのものであるわけがない。現実を知る人々は、どこかで「自分の知っている現実と違う」という違和感を抱くことになる。
もちろん、原作コミックもフィクションだ。起伏は求められるが、基本的に「ポジ抜け」(=爽やかな読後感)が求められる。そこは、重い現実を提示したままの結末も許容されるノンフィクションとの決定的な違いだ。柏木さんは、連載の準備段階から現在までを振り返って、このように語る。
「ずっと、『フィクションで描かれるケースワーカー像は、どうあるべきか?』といったことを考え続けてきました」
何を描けば「描いた」ことになるのか。何が伝われば「伝えた」ことになるのか。それは、私自身の毎日の課題でもある。原作コミックは、「柏木さんから、学べるだけ学ぼう」と思いながら読んでいた。