寺畠社長はそれまで、海外事業を統括する子会社、JTインターナショナルの副社長を務めていた。国内での変貌に驚き、出遅れた加熱式たばこでの反転攻勢に出ると誓った。就任早々の2月の決算会見では、加熱式たばこでカテゴリーシェア40%を狙うという壮大な目標をぶち上げた。

 加熱式たばこは、電子的なデバイスを用いて葉タバコを加熱し、ニコチンなどを含んだたばこの蒸気を発生させるもの。通常の紙巻きたばこのように火は使わず、燃焼が起きない。

 加熱式たばこの煙に含まれる幾つかの有害物質は、紙巻きたばこより少ないことが複数の研究で明らかになっている。

 また紙巻きたばこに比べて、においが少ない、部屋が汚れないといった特徴があり、そうした実用性が一因となって、日本では市場が急速に拡大。縮小が進むたばこ市場にあって、紙巻きたばこからシフトが進み、2020年までにたばこ市場全体の30%を占めるという予想もある。

 JTは、加熱式たばこで他社の後塵を拝してきた。

 市場では、いち早く製品を展開してきたフィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の「IQOS(アイコス)」、続くブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の「glo(グロー)」の二つに圧倒され、JTは「シェアを公表する段階ですらない」(JT関係者)という状況だ。