豊洲の土壌汚染問題など、紆余曲折あった築地市場移転問題だが、約2年の移転延期を経て、ついに10月11日、東京都中央卸売市場築地市場は豊洲へと機能を移転した。一般消費者からすると、築地と比べて「豊洲は行きづらい」「汚染問題も気になる」状況の中、豊洲市場での仕入れ客は築地時代よりも少なからず減少するのではないかという見方がある。では実際のところ、豊洲市場への移転を機に、東京近郊の市場の勢力図は全体としてどう変わるのか。移転前から起きている周辺市場も含めた変化などから、今後の東京都近郊の中央卸売市場の行方を探る。
築地市場の移転は、
築地と豊洲だけの問題ではない
2018年10月11日、東京都中央卸売市場築地市場は、豊洲市場へと移転した。この卸売市場の移転にあたっては、以前から土壌汚染をはじめとした豊洲市場の問題ばかりが報道されているが、今回の中央卸売市場の移転は築地市場と豊洲市場だけの問題ではない。
東京都だけでも水産物を扱う卸売市場には、ほかに足立市場、大田市場があり、さらに首都圏の水産品を扱う卸売市場でいえば横浜市場、船橋市場など大小様々な卸売市場がある。そのような築地、豊洲以外の水産卸売市場の現場にも、今回の移転はかなりインパクトを与えている。
また、すでに2年前には、築地市場場外に「築地魚河岸」が建設されてプレオープンしており、今回の中央卸売市場築地市場の移転に合わせる形でこの10月1日に正式オープンした。
「築地魚河岸」は本来、築地市場移転後も飲食店のプロ料理人に築地へ仕入れに来てもらうことを目指して作られた施設だ。しかし、2年前の完成時は豊洲への移転が延期されたため、プロは依然として築地市場場内で仕入れをする状況が続き、「築地魚河岸」は一般客・観光客向けの販売スタイルで営業を続けていた。そうした中で、今回の豊洲移転を受けて正式オープンしたことに伴い、一般客・観光客向けの販売スタイルが一転、本来目指していたプロ向けの販売スタイルへと様変わりしたのだ。
築地から豊洲への中央卸売市場の移転を機に、すでに「築地魚河岸」のような変化が起きているが、水産物の流通はどのように変わってきており、これからどう変わっていくのだろうか。今回は、首都圏にある他の卸売市場や築地の地に残った場外市場を中心に関係者に取材を進め、それらを探っていった。