所得の捕捉率を表す
「クロヨン」問題とは

 近代国家においては、さまざまな社会保障制度が、正確な所得の把握を前提に構築されている。そこで、社会保障制度を構築するには、そのもととなる所得情報が正確でなければならない。生活保護受給者が実は働いていて相応の所得があった、というのでは制度は維持できない。

 ところが、給与所得者、自営業者、農業所得者の間には、クロヨン(9:6:4)という捕捉率の格差があり、所得が正確に把握されていないと言われている。

 給与所得者の所得は企業が給与から源泉徴収する必要があるので、ほぼ完璧に把握されているが、自営業者の場合、必要経費を自ら算出して自己申告するので、本来は経費に入らないような私的消費が紛れ込む場合があることなどが、その理由とされてきた。

 税法では、このような私的消費を、家事費・家事関連費と定義して、収入から控除できる経費と区別してきた。とりわけ家事関連費については、事業用経費と私的消費の区分が明確にされている場合(例えば自動車の使用日報を付けているような場合)に限って、経費に算入できることになっている。

 しかし、個人に対する税務調査の機会は限られているので、現実的には家族でレストランに行った支払いなどの家事費(個人的消費)が経費に混入し、その分所得が低くなっている場合もある。

 このようなクロヨンに対して、税務当局は課税の適正化に向けてさまざまな努力をしているが、その努力には限界がある。この問題は、基本的に税務執行の問題で、各国の税務当局にとって、共通の悩みというべき問題である。