「有形のものではなく、無形のサービスを意識してみれば?」

 そう言われてハッとしました。
 ボク自身が「モノからの満足感」を欲していたので、どんなお客さまにも同じ観点でサービスを提供しようとしていたのです。

 さらに先輩スタッフが行なっているサービスを観察してみると、お菓子やワインをサービスする場合と、自筆のメッセージカードやレターをサービスする場合があることに気づきました。

 ボクはそのアイディアを真似しました。常連のお客さまや、スイートルームよりも上位クラスになるエグゼグティブスイートやデラックススイートなど、1泊60~100万円くらいのお部屋にお泊まりになる本物のお金持ちには、メッセージやレターを置くことにしたのです。

 すると、お客さまはとても喜んでくれて、お礼に自筆のメッセージをお返しくださったりすることもあったのです。
 サービスを自分の観点だけでなく、相手の立場・気持ちになって考えることの大切さを学びました。

 とは言っても、ボクの心の奥深いところでは、
「やっぱりお金をたんまり持っているし、欲しいものは何でも買えるから、モノとか有形のサービスにはもう感動しないんだろうな」
 というちょっと卑屈な思いがあったのも事実です。

 そんなときにおじいに言われたのは、

「もともと気持ちや思いを大切にしている方だから、成功できたのでは?
 本物のお金持ちは、心の満足感を大切にするし、もともと心が億万長者だからね」。

 確かに、本物のお金持ちたちは「心が億万長者」という表現がピッタリ当てはまります。

『天国おじい』に登場する数々の成功者とのエピソードを読み返していただくと、彼らの言葉から心の豊かさを養うポイントを知ることができるかもしれません。

『天国おじい』にも登場する、前述したマネジャーの言葉を今でも思い出します。

「サービス精神が大切とは言うけど、サービスすること自体が重要なのではなくて、サービス精神の『精神』が大切ってこと。
 だから、いつも豊かな気持ちを養うようにしたいよね」