大西洋をはさんだ欧州と米国の関係は修復可能なのか? 第1次世界大戦終結から100年が過ぎた今、世界が直面している問題がこれだ。パリで開かれた第1次大戦終結100年の記念式典で示された兆候は、良いものではなかった。エマニュエル・マクロン仏大統領は、「愛国主義の対極にあるもの」としてナショナリズムを公然と批判した。その様子を眺めていた自称ナショナリストのドナルド・トランプ米大統領の表情は冷ややかだった。米国と欧州主要3カ国(ドイツ、英国、フランス)の同盟関係はトルーマン政権以来、最も冷え切っていると言っていいだろう。奇妙なことだが、現在の関係悪化は、安全保障や経済、そしてイデオロギーの面でも欧米主要国の利害が一致する方向にある中で起きている。ロシアと中国はともに、欧州連合(EU)の弱体化、欧米の同盟関係の分断、そして米国の影響力の減退を望んでいる。中国の攻撃的なまでの重商主義的経済計画は、ドイツ経済の中核である資本財と自動車産業を標的にしている。世界がより良い指導者の下にあれば、欧州と米国は、世界政治の困難な新時代に向けて連携を強化するだろう。しかし、現実の世界では、大西洋の両側で恨みや憎しみが積もり、同盟関係は必要性が高まっているにもかかわらず弱体化している。
ナショナリズム巡るマクロン氏の間違い
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