Echo

 Alexaに対応した、アマゾンの「Echo」シリーズに新モデル「Echo Show」が登場した。単なるスピーカーではなく、ディスプレーを搭載した製品で、スマートスピーカーをさらに便利に使うための機能が満載の製品だ。

スマートスピーカーがさらに使いやすくなるディスプレー

 アマゾンのEchoシリーズは、音声アシスタント「Alexa」のフロントエンドとして、音声操作で様々な操作ができるスマートスピーカーだ。これまでは、コンパクトな「Echo Dot」や円筒形の「Echo」「Echo Plus」といったスピーカー+マイクで構成された製品が中心だった。

 しかし、Alexaの機能が増えるにしたがって、音声で返すだけでは使いづらい場面も多くなった。そうした場合に、やはりディスプレーがあった方が便利、と考えるのは自然な流れだろう。

Echo Spot
Echo Spot

 というわけで登場したのが、2.5インチの円形画面を搭載したEcho Spot。車のダッシュボードのスピードメーターのような印象の半球型デバイスでデスクサイドやベッドサイドにもコンパクトに置けるが、やはりディスプレーというのは大型化するものである。

Echo Show
Echo Show

 そこで今回の「Echo Show」だ。10.1インチと普通のタブレット並みのディスプレーを搭載して、よりコンテンツの視聴性を高めた製品となる。Echo ShowのUIは、基本的に同じAmazonのタブレット「Kindle Fire」に近いものとなっている。OS自体がFire OSかどうかは不明だが、プロセッサーはインテルベース。Fireタブレットとの違いはアプリの追加ができない代わりに、Echo向けのスキルを使用できる点だ。

セットアップのしやすさも画面付きの利点

 まず分かりやすいのは、セットアップ手順。画面のないスピーカータイプのEchoだと、スマートフォンと連携させて設定するが、Echo Showなら画面タッチで済む。文字入力も可能なので、単体で無線LANの接続やAmazonアカウントの設定などができる。

 セットアップ後は、画面に時計と天気が常時表示される。スマートスピーカーだとどちらも音声で聞いて、確認しなければいけない情報だが、画面が見える場所なら、すぐに確認できるのは便利だ。さらに、ディスプレー上には常時情報が流れ続けている。「話題」という形で、最新のニュースも表示され、画面タッチで短いニュースが表示される。

Echo Show
時計と天気が常時表示されるので、わざわざ声で尋ねる必要もない。下部には、Alexaへの問いかけ例が表示される

 音声操作のとっつきにくさのひとつは、何を聞けばいいのかが分かりにくい点だ。

 その点でもEcho Showはいい。画面の下部には「アレクサ、○○について教えて」と表示され、その通りに音声で尋ねると、そのニュースをAlexaが音声で話してくれる。電車の車内ニュースのように1画面で収まる短いニュースだが、音声とテキストの両方でカバーできるのは便利だ。ただ、ニュースタイトルには表示される画像が、ニュース画面では表示されないのは気になった。

Echo Show
定期的に更新されて表示される「話題」。画面タッチでもいいが、下部の問いかけ例で尋ねると、その話題を音声で回答してくれる

 また、本体下部には音声でAlexaに問いかけるフレーズが次々と表示される。呼びかけ方が分からなくても、このフレーズを参考にすれば次第に使い慣れていけるだろう。ただ、ニュースはリアルタイムに更新されるわけではないし。フレーズも何十種類とあるわけではないので、そのうち飽きてしまいそうだ。

 ディスプレーがあるとスマートスピーカーの使い勝手がさらに良くなる。聞き逃したテキストも、ディスプレーを見れば表示されているし、最後まで音声を聞かなくても、文章や絵を見て内容を把握できる。比較的画面も大きいので、多少離れていても内容が分かるし、文字も大きめに表示されるので見やすい。

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設定変更など画面があれば音声アシスタントも便利に

 Echo Showでは、タブレットのように上からスワイプすると設定領域が表示される。ホーム画面に戻る、アラーム、照明など、定型アクション、明るさ、おやすみモードというアイコンが並び、さらに詳細な設定画面にアクセスできるアイコンも用意される。

Echo Show
上部から表示される設定領域。タブレット的なUIだ

 アラームを選ぶと、すでに設定されたアラームの確認、新規作成ができる。音声を使わずに作成することも可能。「照明など」は、いわゆるスマートホームの項目で、宅内に対応端末があればここからコントロールできる。これもタッチ操作で操作可能だ。

Echo Show
「照明など」はスマートホームにアクセスできる。HueやZigBee対応家電などをコントロールできる
Echo Show
その他の設定画面

 定型アクションは、既存のアクションを表示し、タッチするとそのアクションが実行される。作成、管理はスマートフォンのAlexaアプリが必要だ。設定からは、Bluetooth、無線LAN、ホーム画面の設定などが可能。この辺はタブレットの操作感と変わらない。

 基本的には、音声アシスタントのAlexaを使ったスマートスピーカーではある。Alexaに呼びかけ、Alexaが答えるという基本動作は変わらない。ディスプレーに対応した機能でないと、画面があっても特に何も表示されない。

 例えばスキルのYahoo!ニュースは、音声が再生されるだけでテキストも表示されない。逆にYahoo!路線は、路線情報をグラフィカルに表示してくれて、一目見ただけで遅延などの情報が分かる。

Echo Show
Echo Show
グラフィカルで分かりやすいのは天気予報。朝の忙しい時間にAlexaが話し終わるのを待たなくても一目で分かっていい

 個人的に便利に感じたのはクックパッドのレシピ検索。今までのスマートスピーカーだと音声で聞くだけだったのが、画面上にテキストで表示されるので、レシピの確認がしやすい。

Echo Show
繰り返し見返したくなるレシピなどは、やはり画面があった方が便利

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動画検索や楽曲検索も直感的になる

 こうした、グラフィカルな表示が便利なコンテンツ、テキストで見返したいコンテンツなど、スマートスピーカーでは不便なシーンもあったが、Echo Showであれば、テキストで見返せるのが便利だ。

Echo Show
Prime Musicの歌詞表示。対応曲であれば、そのまま歌詞が流れるのは楽しい

 こうした「音声以外のインタフェースがあった方が便利」という機能は多い。スマートスピーカーの主要機能の1つである音楽もそうだ。音楽は音だけなのでディスプレーは不要と言えなくもないが、曲名やアーティスト名といった情報は重要で、特に最近の音楽配信のようにプレイリストやシャッフル再生が主力になっている場合、楽曲詳細を知りたいと、今までは声でアシスタントに尋ねていた。そんな時も画面を見るだけで済むので、これが便利なのだ。

 しかも、Amazon Prime Musicだと対応曲であれば歌詞が表示され、曲に合わせて歌詞が流れるので、歌詞をチェックすることもできる。これもディスプレーがあるからこその機能だ。

 やはり、ディスプレーを搭載するということでPrime Videoのような映像配信での利用が期待されるだろう。「プライムビデオを表示」などというと、まずお勧め映像が表示され、「Prime Original」「Prime映画」「Prime TV番組」という選択肢が表示される。タッチか音声で選択すると、それぞれの映像一覧が表示される。

Echo Show
「プライムビデオを表示」と話しかけると、まずはこの画面。「次に観る」から現在表示された番組が再生される
Echo Show
例えば「Prime Original」を選ぶと動画一覧が表示される。声で指定するかタッチすれば再生が始まる

 あとはタブレットのように画面を送って好きな番組を選択する。もちろん、観たい番組が決まっているならそのまま声で指定すればいい。

 Kindle Fireタブレットとは異なるUIで、単に映像が一覧表示されるだけだったり、シリーズ物を選択しづらかったり、気になる点はある。特に一覧表示された状態から、シリーズの別のエピソードを選択する手法がないのが難しい。

 基本的に、「音声コントロールの補佐としてディスプレーがある」という位置づけなのだろう。スマートスピーカーでは「シリーズ物を一覧表示してその中から見たい動画を選ぶ」という作業はできないので、そこまでの機能が実装されていないのかもしれない。

 動画の一覧表示画面で画面をスクロールするにはスワイプする必要があり、音声でスクロールできないのも不便だ。音声をメインに検索しつつ、画面を見ながら探す、ということはできないようで、このあたりは今後のアップデートを期待したいところ。せめて、Fire TV Stickのように、スマートフォンで検索してEcho Showに表示するセカンドスクリーンのような使い方もできれば良かった。

 とはいえ、Echo Showなら音声での動画検索からそのまま再生もできるので、見たい映像が決まっているなら快適だし、タッチパネルでの操作と音声を併用すれば、画面のないスマートスピーカーよりは簡単だ。HD解像度は少し物足りないが、明るさや視野角、色などは問題ない。

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円錐型のスピーカーで広がり感あるサウンドを再現

 スピーカーは背面にあり、一般的なスマートスピーカーのような360度をカバーするわけではない。三角錐のような形状でスピーカーが配置されているので、やや後方に向けて音が出る形だが、あまり大きな違和感はない。Dolby対応のデュアルスピーカーを搭載し、形状的には左右方向にも広がるので、ある程度広いエリアはカバーしているようだ。Bluetooth経由でスマートフォンなどを接続して音楽を再生することもできるが、AUXには対応しない。

Echo Show
Echo Show
本体は横から見ると三角形。やや後方に向けて音が出る感じだ

 ただ、気にかかるのがAlexaの音声対話の声と、映像配信での音量が一致していない点。映像配信の音を最適にすると、Alexaの声は大きすぎて、逆にすると映像の音が小さくなる。この辺はちょっと不思議なところではある。また、標準だと中高音より低音の方が響くため、映像の場合はイコライザーで調整した方がいいかもしれない。

Echo Show
上部にボリューム、マイク/カメラのオンオフボタンがある

簡単にビデオ通話

 マイクは前面、ディスプレー上部に4つ搭載。音声の下方向を認識するのは、通常のEchoシリーズと同様。音声認識の精度も、Echoシリーズと同等の印象だ。

Echo Show
ディスプレーの上部中央にカメラを配置。その左右に4つのマイクを搭載

 4つのマイクの中央にはカメラも配置されている。このカメラを生かしたビデオ通話機能も搭載している。Echoシリーズは音声通話機能があり、Echo Spotにはビデオ通話機能があったが、Echo Showも当然この機能をサポート。

Echo Show
声の方向を認識して、使用しているマイクの方向が明るくなるのは従来のEchoシリーズと同じ

 「通話を始めて」「ビデオ通話」などと言って、あらかじめ登録しておいた発信先の名前を呼びかければ通話が行える。もちろん、「○○(登録しておいた連絡先)と通話したい」「○○を呼び出して」と言ってもいい。

 相手側もカメラに対応していれば、お互いがビデオ通話できる。大画面なので、相手の表情もよく見えるのがメリットだ。通話相手は、Echo ShowやEcho Spotだけでなく、スマートフォンのAlexaアプリでも構わない。その場合、スマートフォンのインカメラを使える。

 使いやすく分かりやすいので、積極的に使いたくなる機能ではある。もちろん、データ通信での通話になるので、音声通話料金が必要ないのもいいところだ。

 ZigBeeにも対応するので、家庭内のIoT家電をコントロールすることもできる。このあたりは従来のEchoシリーズと変わらないが、画面タッチでもコントロールできるなど、使い勝手は良くなっている。

タブレットにはない音声デバイスならではの提案を期待したい

 Echo Showは、大画面によってスマートスピーカーの新しい使い方を提案する製品ではある。見た目がタブレットのため、タブレットと同じような機能を期待してしまうが、あくまでスマートスピーカーの延長であり、機能はスマートスピーカー寄りだ。

Echo Show
本体背面にはmicroUSB、電源が用意されている。一番右はセキュリティロック

 アプリをインストールできないため、見られるのはプリインストールされたAmazonアプリだし、スキルも画面対応のものでないと、スマートスピーカーと同じ音声での利用しかできない。このあたりは、画面の小さいEcho Spotの方が諦めがつくのだが、大画面の分、もっと機能を期待してしまう面があるだろう。

 とはいえ、画面があるだけでスマートスピーカーの使い勝手は良くなる。テキストと音声を併用すると情報量が格段に増加するし、映像が見られるので用途が拡大する。機能的にはまだまだ物足りないが、ディスプレー付きのスマートスピーカーは、新たな可能性を感じさせるデバイスと言えそうだ。

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