Photo by Yohei Kurihara

 ただ、その一方で言えることとしては、できないことは大抵つまらないんですよ。スノボだって滑れるようになるまではちっとも楽しくない。それを、できるかどうか分からないうちに「つまらない」と言って、転職を繰り返すのはもったいないよね、とも思います。僕は「石の上にもn年」を提唱してるんだけど、つまり職種や業界によって習得期間は異なるということ。そもそも「3年」に根拠はないから。営業職は比較的習熟も早いだろうし、IRなら最低でも1年通してやってみないと分からないとか。

正能 その「n年」というのは、実際に同じ職種や業界で働いている先輩たちを見ると、働き方ではなく、生き方として分かってきますよね。この職種でこれだけ頑張ると、こういう働き方や生き方が待っているんだと。それを見たときに「あ、違うな」と思ったら、やっぱり転職しようと思うのかもしれません。n年を待たずして、違うことに気づいてしまうという感覚です。もしかしたらそこに可能性もあるかもしれないけど。

大室 そういう意味では、昔の組織はメンバーシップ型で、社員は“家族”だったから、「n年」をしっかり定義する必要はなかったんです。だって家族に対して「私たちと一緒にいることで、2年目にはこれ、5年目にはこういうメリットを提供できます」なんて、わざわざ言語化するのは気持ち悪いじゃないですか。中間管理職の多くは、それを言うのが苦手なんですよ。だって、水くさいから。

ロードマップで位置を示さなければ
社員が離れていくのも無理はない

大室 でも、今の仕事はプロジェクト型で、「10段階あるうちの何段階まで来ている」というロードマップを示してあげなければ、社員が離れてしまうのも無理はないんです。しかもその基準値は社内だけではなく、世の中でどのように必要とされているスキルが身に付くのか、どんなキャリアに位置づけられるのか、複雑化した地図上でマッピングしてもらいたいというニーズがある。

正能 なるほど。よく転職理由で「この組織では成長できないから」みたいな話を聞きますが、個人的にはピンとこないんですよね。「成長したい」って、植物みたいだなと。なんていうか、成長ってもっと結果論だと思うんですよね。

大室 「週刊少年ジャンプ」に影響されてるんじゃない?(笑)。「成長」って本来は戦闘力のように一元化できるようなものではないですし。

正能 私にとって会社という組織に所属する意味は、先輩に後輩、同期や上司とかいろんな人がいるコミュニティーに所属することで、自分ひとりではできないことが可能になること。気持ちも安定するし、楽しいし。それ以上でも以下でもないと思うんです。だって、成長したいなら、自分でやってもそれはかなうはず。

大室 ただ、昔よりは組織も多様性を生かそうと、それぞれ何が好きで何が得意か、苦手なのか。「私は私」という定性的な軸を大切にするようにはなってきている。少しずつ変化の兆しはあると思います。

(記事提供:Qreator Agent)

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