「メタボ対策」という研修では、
来てほしい社員は集まらない

 健康に関わる大きな要素としては「食」に限らず「睡眠」や「運動」も挙げられます。食の分野の講師としては非常に言いにくいのですが、あまり食を全面に打ち出して研修などを企画すると、「本当に参加してほしい社員が参加しなくなる」ことがよくあります。参加するのはすでに意識高い系ばかり…なんてことが本当に起こり得るのです。だから、健康関連の施策を考える際は、社員にとって価値あるものに置き換えることが大切です。

 例えば、デスクワーク中心の職種ではメタボ率も高くなりやすいですよね。でも、だからといって「メタボにならないための食事」という研修を企画すると「行きたくない」と思ってしまう人が出てしまうのが現実です。「職場環境のせいだから転職しないと変わらない」と思っている方もいますし「すでにメタボになっていて気後れする…」と思う方もいます。だからこそ、社員が解決したいであろう、目に見える課題にフォーカスをすることが欠かせないのです。

 デスクワークが多いと、腰痛で悩む方は少なくありません。そこで、「腰痛を解消しよう」というような研修テーマに変えると、腰痛に悩んでいる社員は多いので、参加率も上がります。そのセミナーの中で、腰痛を軽減するには適正体重にすることも必要で、そのためには…という話を交えれば、食の話が出てきても抵抗なく聞けますし、「参加して良かった」と思ってもらえるものであれば、次の企画への参加も期待できます。

 ちなみに、「腰痛予防のために朝礼後に必ずラジオ体操!」というような内容にも反感を覚える方が少なからずいらっしゃるので、全社員が強制的に参加するようなものは、場の空気をあたためる、事前にその必要性の理解を促す必要があるかと思います。

 最近は、健康経営の観点からではなく、これまでメンタルヘルス対策に重きを置いていた企業が、メンタルヘルスの不調にはフィジカルな不調が起因となっているケースもあるのでは、とフィジカル面の対策に力を入れ始めてきた印象を受けます。

 心理学者のアイゼンバーガーによると、会社が社員の成長や心身の健康にどのくらい配慮しているかを社員が強く感じるほどに、欠勤が少なく、会社への貢献度や責任感が強まるのだそうです。健康経営への取り組みが、ブランドのための一要素で終わらず、企業と社員との良いつながりを生み出せるものになるといいな、と心から思います。

(栄養士・食事カウンセラー 笠井奈津子)