北京の街並Photo:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」 

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 中国経済は長らく懸念されてきた「ハードランディング」のリスクにさらされている。ハードランディングとなれば、成長の急減速が雇用に打撃を及ぼし、世界の債券・外為市場に大きな問題をもたらしかねない。

 原因となるのは、トランプ米政権が信じたがるような米国の貿易圧力ではない。中国政府が自ら「シャドーファイナンス(影の金融)」を締め付け過ぎたことが原因だ。民間部門の借り手はしばしば銀行融資を取り付けるのに苦心するが、政府は代替の融資経路を整えることなく取り締まりを強化した。その結果、中国人民銀行(中央銀行)は9カ月にわたり大規模な緩和を実施したにもかかわらず、信用拡大の減速には歯止めが掛からないままだ。こうした傾向が近く反転しない限り、卸売物価指数(PPI)はマイナスに陥りかねず、多額の債務を抱える産業部門が大きな問題に見舞われる恐れがある。

 シャドーバンキング(影の銀行)の急速な広がりは、2010年以降に国有化が進んだ銀行システムにとって必要悪とも言える副産物だった。民間企業は中国経済の約3分の2を占めるが、新たな融資案件に占める比率は3分の1にとどまる。企業が融資を求めて続々と裏の経路へ向かったのも不思議ではない。

 このため、昨年のシャドーバンキングの取り締まりは融資の滞りにつながった。銀行システムの流動性は潤沢とはいえ、国有銀行は依然として、融資を求める企業には資金を振り向けず、代わりに金融システムを流動性で溢(あふ)れさせている。中国のインターバンク市場は10-12月期の回転率が前年同期から21%上昇した。

 過去の緩和サイクルでは、人民銀は指標金利の引き下げや市中銀行から強制的に預かる準備預金の縮小といった措置を取ることが多く、そうした措置を打ち出した数カ月後には企業や家計の借り入れが増加した。だが、今回は違う。預金準備率を数回にわたって大幅に引き下げ、銀行間金利も大きく引き下げたにもかかわらず、非金融系の融資は差し引きで12月の伸び率が9.8%に鈍化した。これは過去10年余りで最低の伸びだ。

 別の言い方をすれば、銀行システムの流動性はここ1年で約2割拡大した一方、融資の純増率は3割ほど縮小したことになる。その理由は明らかだ。影の金融の融資残高が2018年に10%も減少し、記録にある限りでは突出した急減となったためだ。

 規制当局は問題を認識している。中小企業への銀行融資を後押しするため、現在は人民銀の新たな貸出制度を導入しつつある。これに加え、経済にはまだいくらか衝撃を吸収する余地がある。インフラ投資は再び拡大している。消費者は苦闘しているが、大きく報じられるほどではない。

 いずれの防波堤も数年前ほど強力ではない。消費者は以前より負債を抱えている上、簿外融資によるインフラ投資を抑制する措置は引き続き投資を圧迫している。不動産市場が崩壊すれば、中国は深刻な状況に陥るだろう。

 中国の非効率な金融システムは以前から「手術」を必要としていた。ただし、適切な移植を準備することなく影の銀行システムを摘出すれば、規制当局は患者を死なせてしまうリスクを冒すことになる。

(The Wall Street Journal/Nathaniel Taplin)