企業で人材戦略の重要性が高まるなか、現状の課題をどう克服し組織の成長に繋げるかが、さかんに議論されています。デロイトのHRテクノロジー(HRテック)の第一人者であるジョシュ・バーシン(Josh Bersin)氏と、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」やSaaS型の人材活用プラットフォーム「HRMOS(ハーモス)」などを展開するHRテックカンパニー、ビズリーチの南壮一郎 社長が、「Future of Work(未来の経営と働き方)」について熱く語り合う対談企画をお届けします。前編では日本企業が抱える課題について、後編では個人のキャリアについて考えます。(撮影/水津 惣一郎 /Soichiro Suizu)
なぜいまHRテックが
注目されているのか
南壮一郎(以下、南) バーシンさんは、米国企業の人事・労務管理とそのテクノロジーを知る第一人者として活躍されていますが、キャリアのスタートはエンジニアだったそうですね。
ジョシュ・バーシン(以下、バーシン) ええ。工学修士を修了後、MBAを取得し、いくつかの大手企業でeラーニングやエンタープライズ向けソフトウェア製品の開発に携わっていました。その後、2001年にはBersin & Associatesという会社を創業し、データ技術を活用した組織・人材開発のコンサルティング業を営んでいました。
その会社をデロイトに売却し、現在はデロイトのプリンシパルとして「Bersin by Deloitte」というブランドのもとで、最先端のデジタル技術を活用した人材・組織戦略の立案から実行までのお手伝いをしながら、HRテックを通じた企業の生産性向上に努めています。デロイトが発表している、HR領域におけるグローバルトレンドをまとめた「劇的に変化するHRテクノロジー2018」にも携わっています。HRのプロフェッショナルには大変参考になるレポートですので、ぜひご覧になってください。
南 ここ数年、米国だけでなく日本でも「HRテック」に注目が集まっています。なぜここまで「HRテック」が注目されていると思いますか。
バーシン 「HRテック」というキーワード自体は、新しい言葉ではありません。それこそ1960年代、IBMの大型電算機が企業に導入された頃から「HRテック」という言葉はありました。昔は、人事・総務部門の仕事を効率化する技術を指していましたが、時代が変わり、今では従業員が入社から退社までの間に接点のある、あらゆるデジタル技術を「HRテック」と表現していますね。