「人事は最重要の戦略部門」
経営者が本気でそう考え始めた
最近、企業の経営者と話をすると、「人」に関する課題に危機感を強めている傾向が見て取れます。その中で「どんな人材が欲しいか」という観点でいうと、必ずといってよいほど挙げられるポジションが2つあります。
それは、「人事部門」と「マーケティング部門」の責任者です。採用人気だけを見ると人事とマーケティングの時代になっているような観すらあります。なぜそのような状況が生まれているのか。まず人事責任者から考えてみましょう。
経営環境が大きく変動するなかで、経営者には新たなビジョンを打ち出したり事業戦略を変更したり、やりたいこと・やらなければいけないことがたくさんあります。それらの実行に必要な人材の採用や組織づくり、ルールの整備など、社長が人事責任者に任せたい仕事は山積みです。
他方で人事部門に求められる仕事の内容も大きく変化しています。ダイバーシティや働き方改革の導入と定着、就活ルール変更への対応や従来よりも厳しくなった労基署とのコミュニケーション等々。そして何よりHRテクノロジーの登場で、ツールの活用による劇的な生産性向上という大きな効果をもたらすことが期待されています。
このように経営環境と人事の仕事という2つの変化の掛け算のなかで、人事部門の重要性がより高まっています。もともと人事は経営戦略を実現するための重要部門とは言われてきましたが、経営者たちも本気でそう認識し始めたのだと感じています。
旧来型の人事責任者には
何が足りないのか?
ところがこれまでの人事責任者は一般的に、バランス感覚に秀でていて社長との付き合いも長く、安定した仕事ぶりの人が座っていることが少なくありません。従来はそうした資質が人事責任者に求められていたからですが、社長がこれから人事責任者にやってもらいたいと考えていることをできるかといえば、非常に難しい。テクノロジーの動向も含め、外部環境の変化に対するアンテナの低い人が多いからです。