致死率が高い伝染病として恐れられているエボラ出血熱が猛威をふるうアフリカの地、コンゴ民主共和国からエボラをはじめ感染症対策の現状や最新事情について、国立国際医療研究センター国際医療協力局から現地に「JICAコンゴ民主共和国保健省次官付顧問」として派遣されている日本人医師、仲佐保がレポートする。今回は第2回。
1例でも陽性患者が出れば
「流行」が宣言されるエボラ出血熱
2018年5月7日(月)、いつも通りコンゴ民主共和国保健省に行くと、何か様子が変だった。どうやら、エボラの疑いのある患者が出たようだ。
私は、2018年3月から、国立国際医療研究センター国際医療協力局から派遣されて、JICA(国際協力機構)のコンゴ民主共和国保健省次官付顧問として首都のキンシャサに来ている。
これまで、南米・ボリビア、アジア・パキスタン、中米・ホンジュラスなどで長期専門家としての経験はあるが、フランス語圏のアフリカは初めてだ。毎日、フランス語と格闘している最中だった。毎週木曜日には、全国から感染症発生の報告があり、先週の5月2日の会議で、出血熱の症例がエボラではなく、検査でデング熱であることが確認されたばかりであった。
翌8日の朝、国立生物医学研究所のムエンべ教授(1976年に世界で最初にエボラウイルス患者を診断し、世界中の研究者から尊敬されている)を訪ねると、「コンゴ民主共和国・北部の赤道州で、2人のエボラウイルス病の陽性患者が出た」とのことである。
エボラは死亡率が50%を超えるウイルス病であり、2014年から2015年にかけて、西アフリカでは1万人近い死亡者を出し、恐れられている病気である。1例でも陽性患者が出ると流行と認定され、WHOに報告して対策を取ることになっている。