弱い動物を捕食する肉食動物は通常、やせていて俊敏であるはずだ。肉食動物が太っていて、動きが鈍く、強い動物を捕食していたら、その生態系(あるいは経済)には重大な問題がある。中国の非効率的な国有企業の略奪的行動は同国の政策立案者と米国の貿易交渉官の双方にとって懸念材料となっている。国有企業の行動を制限すれば、両国の経済に資することになるだろう。ところが、習近平国家主席は市場重視の徹底した改革が必要不可欠だということに納得していないようだ。国有企業が中国の民間部門に及ぼしている悪影響(エコノミストはクラウディングアウトと呼んでいる)は鮮明になる一方である。中国企業がグローバルな規範を無視することが多い理由の1つに、自国の規則が民間企業の経営を難しくしているということがある。生き残るためには、地方自治体当局者の協力を得るなどして規制の網をかいくぐらなければならない場合もある。筋金入りの国家統制主義者である習主席の下で進んだ中国政府の再中央集権化によって民間企業があまりにも大きな打撃を受けてきた理由もそこにある。つまり、地方の「実験」のための場所、特に硬直化した国有銀行システムを回避する方法を探る場所がなくなってしまったのだ。