冷戦後に確立された秩序の崩壊に脅威を感じる欧州諸国は、ロシアと中国、トランプ政権下の米国が主導権争いを繰り広げる世界で影響力を保つ方法を探っている。しかし、欧州連合(EU)が最近、外交政策でいくつかのつまずきを経験したことで、欧州各国政府には流動的で危険な世界の新秩序の中で欧州がプレーヤーとしての地位を維持できるのかとの深刻な懸念が生じた。28カ国で構成するEUの意思決定は、常に容易ではなかった。しかし最近は、ベネズエラへの対応や、迫り来る中距離核戦力(INF)全廃条約の崩壊といった喫緊の問題について、共通見解で合意できないという機能不全の様相を呈している。イタリア、ハンガリーなど欧州の主要諸国でナショナリスト政党が台頭したことはEU加盟諸国の間で対立を生み、国際組織やルールの守護者として欧州が長年培ってきた影響力を損なっている。また、中国の経済力の伸長も、中国の大盤振る舞いの恩恵にあずかりたい諸国と、中国への過度の接近による安全保障面の影響を懸念する諸国の分断を生む。