リノベーションで、日本の住まい選びのあり方を変える――そんな壮大な志を抱き、2009年7月「リノベーション住宅推進協議会」が発足した。同協議会の活動は、リノベーションに関する技術や品質の標準化、普及浸透と幅広く、その成否が日本の中古市場の明日を変えるといって過言でない。協議会の取り組みとビジョンを、同協議会副会長の内山博文氏に聞いた。
住宅双六には
なじまない価値観の台頭
――最近、リノベーションという言葉を聞く機会が増えました。そもそもリノベーションとリフォームの違いは何ですか。
リノベーション住宅推進協議会 副会長・内山博文氏 1968年、愛知県生まれ。筑波大学卒。リクルートコスモス(現コスモスイニシア)を経て、都市デザインシステムでコーポラティブ事業の立ち上げや不動産活用コンサルティングを手がける。2005年、リビタ代表取締役に就任、09年、同常務取締役事業統括本部長に。同年、社団法人リノベーション住宅推進協議会副会長。既存住宅市場拡大のためのフレームワークづくりに携わり、講演活動も積極的に行なっている。 |
内山:じつはすごく定義が曖昧なのですが、リフォームは、例えば汚いから壁紙を換えるとか、キッチンが古くなったので入れ替えるというように、問題解決を前提としているのに対し、リノベーションは時代や入居者の暮らし方に合わせて、機能、価値を向上していこうという積極的な考え方に基づいています。
結果として、水まわりや間取りの変更を伴う大規模な工事となることが多いのですが、リノベーションによって、住まいとしての機能・価値を向上させることで、その資産価値まで高められるようになってきました。
またリノベーションは、消費者が物件を購入して行なうものと、業者が物件を買って行なうものに分けられます。都心部のマンションを中心に再販型といわれる後者が特に伸びており、請負型と呼ばれる前者も、若い世代を中心に注目を集めています。
――現在の市況をどうご覧になっていますか。
内山:マーケットの住宅に対する意識の変化を感じます。ポスト団塊ジュニア世代が中心になって、リノベーションに向かう傾向が強まっています。新築が減ったから中古へ、というのとは少し意味合いが違いますね。
実際、首都圏の新築マンションの供給数は2007年までは平均8万戸だったのに、08年は4万戸台、09年はそれを割り込む見通しです。しかしバブル前を見るとずっと4万戸が水準。減ったというより、むしろ潜在需要に対して適正になったと私は見ています。
それよりも、住宅双六(すごろく)のように「いつかは庭付き一戸建て」と住宅購入をゴールにするのではなく、購入後どんな暮らしをしたいかを重視するという意味で、本質的に「家を買うこと」を考える人が増えてきたのでしょう。立地にも価格にも間取りにも妥協したくない方、自由設計で自分らしい暮らしを実現されたい方にリノベーションが選ばれています。