「缶だけで見るとBOSSは昨年比でかなり苦戦しているのは業界でも周知の事実となっている。サントリーの営業サイドではトクホ(特定保健用食品)の特茶などの利益率の高い商品を重点的に売るように号令がかかっている」(飲料業界関係者)という。

クラフトボス効果は長くは続かない

 コーヒー飲料市場が縮む中、カニバリ(共食い)を覚悟であえて市場を伸ばすための新たな打ち手として投入されたクラフトボス。それが今回、コーヒー以外に手を出した「真意」をめぐっては二つの見方がある。

 一つは、現在クラフトボス効果で高まっているブランド価値を利用して、別カテゴリーの市場を取りに行く、という戦略だ。「BOSSは働く人を応援するブランドという位置づけで、実は最初からコーヒーのブランドとは言っていない」と同社の柳井慎一郎常務は言う。18年にBOSSはショート缶でコーンスープやコンソメスープなどの「ビストロボス」シリーズを出している実績もある。

 無糖紅茶で競合する商品は、紅茶カテゴリーでトップシェアを誇るキリンビバレッジの「午後の紅茶おいしい無糖」くらいしかない。現在市場が伸びている無糖茶飲料だが、見方によっては参入企業が相次いだペットボトルコーヒーよりも競争環境が緩く、ブルーオーシャンともいえる。

 もう一つは、確かにクラフトボスは新たな市場を作ったものの、やはりコーヒーだけではこれ以上の大きな成長は見込めないという事実だ。「まだペットボトルコーヒーはあと数年は伸び続ける市場ではあるが、既存製品だけではクラフトボスブランド全体で前年の販売量を上回ることは難しい」と柳井常務も言う。

 人口減少時代に突入し清涼飲料市場も基本的には縮小する中、成長を続けるには他社からシェアを奪う以外に方法はない。清涼飲料業界では首位級メーカーであるサントリー食品すらそんな厳しい市場の現実からは逃れられない。発売から2年で早くも他カテゴリーに“浮気”したクラフトボスは、まさにそれを象徴している。