だが、内実は厳しい。例えば、ある関係者によれば、京都府のタクシー協会が年始に推奨の配車アプリを選定したが、選ばれたのはジャパンタクシーとMOVの二つ。「露骨な外資外し」(関係者)だ。

 とりわけウーバーは、かつて福岡市で行った相乗りサービスが国から中止の指導を受けており、いまだにタクシー事業者からは警戒されている。昨年12月に参入した大阪府は、DiDiが先行する激戦地区だが、スタートは600台余りと苦戦の状況がうかがえる。

 一方で、外資勢ならではの強みもある。海外に構築された強固なユーザー基盤だ。

 DiDiは開始当初、中国人の利用者数の割合が50%を超えていたという。今でこそ国内需要の掘り起こしに集中するが、同一アプリでインバウンドがそのまま取り込めるのは、大きな強みだ。

 タクシー事業者にしてみれば、「どれだけお客さんを連れてきてくれるか。最終的にはそれが最も重要」(第一交通産業の田中亮一郎社長)。強力なアピールになる。

 20年の東京オリンピック・パラリンピックはインバウンドのヤマ場。各社は大きな商機をにらむが、逆に言えばそれまでにタクシー事業者を獲得し切っておかなければ、このチャンスを逃す。

 国内勢も手をこまねいていない。ジャパンタクシーが打って出たのが、韓国で最大の配車アプリ「カカオT」を展開するカカオモビリティとの資本業務提携だ。18年12月からは、カカオTで、ジャパンタクシーの提携タクシーの配車も可能となった。

 こうした相互連携は海外ライドシェアでは珍しくない。米リフトとシンガポールのグラブも同様に相互利用を行っており、いわば常道。海外需要の取り込みでタクシー事業者にもアピールする。

高齢化に人手不足
配車アプリが業界の助け舟に

 現状は、配車アプリ参入企業をタクシー事業者側がえり好みできる優位な状況にも見えるが、実は、中長期的には、タクシー側がその恩恵にあずかるところが大きい。

 なぜなら、タクシー産業が曲がり角に来ており、課題が山積しているからだ。その2大課題が、ドライバーの高齢化と人手不足。ドライバーの平均年齢が上昇し、タクシーの供給台数は年々減少している。一方で、流しが多い都心では実車率は5割に満たない。つまり、タクシーは非効率の塊なのだ。