事の発端はトップ会談で
飛び出した「経営陣の刷新」

 事の発端は昨年6月。伊藤忠の岡藤正広代表取締役会長兼CEOと、創業家出身の石本雅敏デサント社長とのトップ会談だった。

 伊藤忠側は、韓国に過度に依存している経営の改善とともに、現経営陣の刷新を求めたのに対し、デサントは明確な回答を拒否。そのため伊藤忠側は、「このままでは定時株主総会の役員選任議案に反対する」と宣言、その後、計3回にわたってデサント株を買い増していった。

 これに対してデサント側は、いわゆる“ホワイトナイト”としてワコールとの業務提携を発表するなど抵抗。水面下で銀行などが仲裁に動くものの、両社の関係はこじれにこじれた。

 そのため伊藤忠は今年1月、敵対的TOBに踏み切ることを決める。しかしデサントは、伊藤忠から何度も経営改善の指摘を受けた事実はないなどとして、TOBの理由自体が事実と違うと反論。伊藤忠出身者が社長を務めていた際、伊藤忠を通して取引するよう迫られたとして、「伊藤忠が実質的な経営権を握れば、自分たちの利益を優先しかねない」と主張する。

 一方の伊藤忠からすれば、過去に2度、デサントの経営危機を救ったという経緯があり、「恩知らずにも程がある」(伊藤忠関係者)という思いがある。つまり、両社の間には、長年にわたる根深い感情的な対立があるのだ。

 今回のTOBで、伊藤忠は5割というプレミアをつけた価格で株を買い取り、出資比率を最大で40%まで引き上げるとしている。そうした“破格”の条件に加え、第2位の株主でデサント株の約7%を握る中国スポーツ用品店大手、安踏体育用品(アンタ)も賛同する方針を示しており、TOBの成立は確実視されている。

 だが、いまだ臨時株主総会をちらつかせて妥協を迫るようなやり方を見るにつけ、成立したとしても両社の感情的なしこりは残り続ける。