会見の様子Photo by Kohei Takeda

第一次安倍政権時代に構想が浮上してから足掛け13年。日本取引所グループと東京商品取引所が28日、株式や債券に加え、商品先物を一元的に扱う「総合取引所」の設立への基本合意をようやく交わすに至った。だが、協議過程では当事者間の利害や思惑が優先され、本丸の商品市場の活性化への議論は道半ば。両取引所のトップの資質にも疑問符が投げかけられている。そんな今回の統合交渉の過程から浮かび上がってきたのは、ニッポンの商品市場が“ディール(取引)”の犠牲となってしまった実態だ。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

 今年1月、「総合取引所」を巡る東京商品取引所(東商取)の濵田隆道社長の考えを豹変させる出来事があった。転機となったのは、日本取引所グループ(JPX)の清田瞭CEO(最高経営責任者)と面談したこと。15年に東商取社長へ就任後、かねて強硬にも映る態度で総合取引所の実現に反対してきた濵田氏に、一体何が起きたのか。

 両者の面談自体はそれまでも行われていたが、実はこの際、濵田氏は清田氏から「JPXの役員ポスト」という“にんじん”を目の前に差し出された。すると、それまでは商品市場の活性化につながらないなどとして実質的に総合取引所には反対論を貫き、「JPXからの30%出資・商品移管は一切なし」というスキームが限度とする立場を取ってきたにもかかわらず、これ以降は「JPXの100%出資・電力先物と原油以外は全て移管」を受け入れる方向性へあっさり翻意したのだ。