ドナルド・トランプ米大統領は政治的盟友であるスティーブン・ムーア、ハーマン・ケイン両氏を連邦準備制度理事会(FRB)に送り込みたいと考えているが、いずれも経済学の博士号を持っていない。支持者にとって、そして一部の敵にとってさえ、それは美徳であって悪徳ではない。現在のようなポピュリストの時代に経済学に精通していれば、それは現実離れし、傲慢(ごうまん)で、間違っていることを意味する。プロフェッショナルな経済学者が中心となって運営される中央銀行ほど、エリート主義や学歴偏重に対する反感を招いてきた機関はほとんどない。ベン・サス上院議員(共和、ネブラスカ州)はこうした心理をうまく表現した。ムーア氏は減税をはじめとする保守的理念の提唱者だが、「スティーブの(FRB理事への)指名はベルトウェイ(訳注:ワシントンの首都機能がその中に集まる環状道路)の支配階級の正式なメンバーをうろたえさせた。そのことはスティーブ自身や米国の創造性に対する彼の信念にはほぼ関係がなく、中央の政策立案者が集団思考に傾倒していることについて多くを物語っている」