ロジカルシンキングのあらゆる基礎を成すといっても過言ではない存在が「モレなくダブりなく」を意味する「MECE」という考え方だ。英語の「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の頭文字を取った略称で呼ばれ、もともとは戦略コンサルティングファームのマッキンゼーの社内用語として使われていた。
MECEはある対象全体を幾つかの要素に切り分けた際、漏れや重複がない状態を指す。論理的思考を進める上での必須コンセプトであり、コンサルティング会社のみならず、事業会社の日常業務レベルでも身に付けておくべきスキルといえる。また、MECEはロジックツリー(「【2 ロジックツリー】 コンサルが大活用する分解して解明する方法」参照、6月28日〈金〉公開)やその他多くのフレームワークを理解、活用する上での前提知識となる意味でも重要な位置を占める。
そんなMECEの概念図を示したのが下図だ。左上の長方形は、枠内に要素が「モレなくダブりなく」入っている理想の姿。それに対し、他の三つはモレ・ダブりのいずれか、または両方が生じており、避けるべき状態だ。
下図を見てほしい。ある問題(イシュー)を解決する際は、幾つかのより小さなイシューに分解する必要がある。その際、MECEを「モレなく」と「ダブりなく」に分けて考えると、「モレなく」が抜けた方が致命的である点は押さえておきたい。
ダブりは後から情報を整理すれば取り除けるが、分解した要素にモレがあったら、そこから先どんなに細かく分析を進めても、要素に抜けのあるままで論理が進行してしまうからだ。もしも事業戦略の策定時にリスク要因の見逃しがあったりしたら、取り返しがつかないことにもなりかねない。
極めて単純なMECEの具体例としては、人を「男性」「女性」に分けるような方法が挙げられる。ただし最近では、男女のカテゴリーに分類できない性的少数者(LGBT)を含めないと全体の人口動態を把握できないといわれる。