「MECE(ミーシー)」って、何者なんだろう
日本で論理思考(Logical Thinking)を学ぼうとすると、「MECE」の練習から始まります。MECEは、Mutually Exclusive, Collectively Exhaustiveの略で、ふつうはミーシーと読み、「漏れなくダブりなく」とも訳されます。
互いに(mutually)、排他的で重ならない(exclusive)が、集めると(collectively)、全体になってスキマがない(exhaustive)、というわけで、イメージは嵌め込みのパズルです。
ではなぜこれが、論理思考の基礎かというと、ふつうの人間の思考には、あまりにも「漏れ」や「ダブり」があるからです。
例えば「AとBのどちらにするか決めろ」と言われても、AとBの他に、有力なCという選択肢があるなら、決められません。「漏れ」がありすぎです。
逆に、AとBがほとんど同じことだったら?これまた、選びようがなくなってしまいます。(どっちでもいい、という決め方はあるが)「ダブり」すぎです。
だからいつの頃からか、MECEにモノゴトを整理することが、論理思考の基礎だということになりました。
でも、MECEに拘るがあまり、人々はいろいろなワナに落ちるようになりました。
MECEのワナ(1):7~8割でいいのに…
MECEのイメージは嵌め込みパズルです。全体があって、それをスキマなく埋めるピースに「分解」していくわけです。
例えば人間は、年齢別に分解でき、それはかなり厳密にMECEです。10歳刻みでも、1歳刻みでもそうです。
でも性別となると実は簡単ではありません。男女の他に、性同一性障害の人をどう扱うのか、性転換者をどちらに分類するのか、性指向(男女どちらが好きか)の分けは…。全体の10%未満かもしれませんが、厳密にMECEであろうとすると、結構大変なのです。
もしその「論理思考」の目的が「性別の厳密な定義」ならそのMECE追究にも意味があるでしょう。でもほとんどの場合、「男女別」で十分です。なぜなら、われわれが日常、ビジネスで求められることがそうだからです。
多くの場合、「7~8割押さえてるならOK」なのです。2~3割のスキマは後回しで構いません。7~8割の中で1~2割ダブルカウントしていても、誤差の範囲内です。「強いニーズを示していた人が30%いた!」と「強いニーズを示していた人が27%いた!」でなにか結論が変わるでしょうか?
われわれが拘るべきは、モノゴトをすべてMECEに切り分けることではありません。ダイジな7~8割をちゃんと捉えられたかどうかなのです。