M&Aの件数が2012年から7年連続で増加し、18年には過去最多の3850件を記録した。その中で、大企業を中心に行われているのが、海外企業とのクロスボーダーM&Aだ。増加する様子から順調そうに見える海外M&Aだが、現場ではさまざまな課題があり、買収の効果を最大限に生かせないケースも少なくないという。海外M&Aの最前線に立ち、7月1日にはM&Aや事業再編支援などを行うPwCアドバイザリー合同会社の新たな代表執行役パートナーに就任する吉田あかね氏に、日本企業によるM&Aの課題について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 林恭子)
M&A激増の一方で
買収後に苦慮する企業が多数
――2018年、日本企業が当事者になったM&Aの件数が過去最多になるなど、増加の一途をたどっています。現在、急増するM&Aの現場では、どのような課題がありますか。
人口減少に伴って国内市場が縮小する中、多くの日本企業が新たなビジネス拡大のチャンスをうかがっています。そんな中で、キャッシュを潤沢に持つ企業の多くが、その使い道として海外での企業買収に活路を見いだしています。
以前に比べると、資金面においては、日本企業がM&Aを行える体制は整っています。しかし、「買収後の経営統合」については、全てではありませんが、基本的に発展途上であると言わざるを得ない状況です。つまり、多くの企業が、M&A後の経営統合のプロセスに苦労していて、買収の効果を最大化できずにいるのです。
日本企業は買収後、“ゆっくりモード”で対象企業を経営するのが一般的です。一方の海外企業は、買収して所有権が自社に移転した途端、すさまじいスピードでオーナーシップを発揮し、対象会社の事業を見直して、効率化を進めます。