さきの大阪G20サミットでも、安倍首相はほとんどの首脳と個別会談を行ったが、文大統領との会談は実施されなかった。

 本来なら、輸出管理規制を強化する場合も、政府間で十分な協議を経て実施に移すのが友好国間の基本的なやり方であるはずだ。

 もはや敵意に満ちているとしか思えないような対応は関係を一層、悪化させる。

 今日の政治は世界のいたるところでそうだが、背景には外交における世論の役割が従来とは比較にならないぐらい大きくなっていることがある。ポピュリズムの台頭だ。

 世論を巻き込んだ外交が、結果的に相手を嫌う世論を増幅させ、政府もこのような世論から逃れられなくなった悪循環が起こっている。
 
 日韓が、双方にあまり共通利益がなく友好国同士の関係ではない、というのなら両国民の感情に従った関係になってもやむを得ないだろう。しかしそうではない。

 改めて、日韓関係は日韓双方にいかに重要かを冷静に考えてみる必要がある。

 日韓にとり双方は共に中国、米国に次ぎ第3位の貿易相手国であり、投資の規模、人的交流(昨年日本を訪問した外国人旅行客の25%は韓国から)などから見ても、きわめて重要なパートナーであることは疑問の余地がない。

 輸出管理の厳格化が韓国の半導体産業に大きな痛手になることが示す通り、日韓の間にはハイテクや金融を中心に深い相互依存関係がある。

 安全保障面で見ても韓国の最大の脅威は北朝鮮であり、米韓の同盟関係が抑止力になっているが、実際に朝鮮半島有事となれば、日米安全保障体制に基づく日本からの支援がなければ米韓同盟も全く機能しない。

 東アジア地域の政治安保協力を見ても、日韓は共に民主主義国であり米国の同盟国として同じ方向を向いている。確かに、日韓双方にとって安全保障面での米国との関係、経済面での中国との関係が圧倒的に重要になり、日韓関係の重要度が相対的には減ったことは事実だろう。

 しかし、それがゆえに隣国としての緊密な関係の重要性が減じることはなかろう。

 外務省がホームページで掲げている深刻な懸案問題は多い。竹島問題、慰安婦問題、徴用工問題、日本産水産物の輸入規制、日本海呼称問題など、どれ一つをとっても解決が難しい。

 こうした懸案が多いなかで、双方が重要な友好国としてお互いを尊重しないのであれば、相互依存関係は崩れる。必ずや経済や国民レベルの交流も、先細りになってしまうだろう。

 いま一度、日韓両国政府は日韓関係が双方にとってどれだけ重要か、国民レベルで啓発をするべきだ。今日の両国政府の相手に対する思いやりのない冷淡な扱いが常態となるのは、国民レベルで理解を深めるのにも具合が悪い。