そして動画を見ているうちに自分も試してみたくなり、早速キャンプ道具を買いそろえた。次の休日、愛車でキャンプ場へ向かった。1人なので少々不安だったが、実際やってみると、何を食べるのも、何をするのも自分の好きなようにできる。そして何よりも、大自然の中に身を置くと、それだけで癒された。仕事で疲れ切っていたAは、この解放感にすっかりハマり、それから休みのたびに、近隣のキャンプ場へ出かけるようになった。

 やがて、「日帰りじゃ物足りない。最低3~4泊はしたい。また昔のようにキャンプ場巡りに行きたい」という気持ちが高ぶるばかり。ところが人手が足りない職場の状況を考えると、「まとまった休みは取れないだろうなぁ」とAは途方に暮れていた。

有給取得の拒否は
法律違反なのか

 そんな7月のある日、Aは友人のCとLINEでやり取りをしていた。

「夏休み、仲間とキャンプするんだ。Aも来ないか?」

 CはAを久しぶりに誘ってみた。

「8月のお盆時期かぁ。休みが取れないので無理だよ」
「そうか、それは残念だなぁ。ところでAは最近キャンプへ行ってないの?」
「今、ソロキャンプにハマっているんだ」

 さらにAは3~4泊でソロキャンプしたいが、なかなか会社の休みが取れない旨を相談した。するとCはこう提案した。

「有休を取ればいいじゃん」
「有休だって?何それ?」
「エッ、知らないの?普段の休みとは別に休みをもらえるんだよ」

 Aは今まで有休の存在を意識したことがなかった。前職でも有休を取得した覚えはなく、Cの提案は意外に思えた。Aにとっては嬉しい話だが、気がかりなことがあった。

「社長が有休を認めてくれるかな?きっといつものように怒鳴られるだろうなぁ」
「大丈夫。法律で決まっている権利なんだから。それに社長があんまり怒鳴るようなら、それはパワハラだよ」
「えっ!パワハラになるのか!?」
「そうだよ。もし、社長が認めなかったら、『有休拒否とパワハラで労働基準監督署に通報します』って言えばいいよ」
「そうか!明日、社長に話してみるよ」