首相も担ぐ吉本は「政治銘柄」
国際問題に発展しうる
そういう半グレみたいな集団でも、反社は反社。そして今回の関係者は、反社の問題をあまりに軽視し過ぎている。僕は反社として締め付けられてきた立場として、国内外の社会がどれだけ厳しいか身にしみて感じてきました。
国内においてはここ10年、暴力団排除条例(暴排条例)が全都道府県にでき、あらゆるビジネスや付き合いが封じられてきました。この流れの中で、芸人やタレントとも昔ほど深く付き合わなくなりました。宴会を開こうにも店も借りにくいようなご時世で、ヤクザにとっては派手な宴会を開いて目立つこと自体がリスク。いかに目立たないかが非常に大事になっているんです。
そして国際的には、AML/CFT(マネーローンダリング・テロ資金供与対策)ほどシビアなものはありません。IMF(国際通貨基金)などあらゆる国際機関は、テロ組織やマフィア、ヤクザだけでなく、振り込め詐欺みたいな犯罪行為に絡む金融取引を、極めて強い意思のもとに排除しています。日本はそういう国際機関から、「対策が手ぬるい」と度々言われてきた国なんです。
吉本は教育事業など行政案件に進出しているでしょう。あまつさえ、安倍晋三首相を新喜劇の舞台に立たせて、政府との関係が深い。そういう影響力の大きい企業が、反社リスクを抱えているわけです。今回の吉本の問題も、国際問題に発展するリスクがあると思いませんか。
そしてもっと深刻なのは、これほどのグレーさを露呈した吉本とテレビ局との関係が、相変わらず密接なままという点です。テレビ局は吉本にとって株主であり、芸人を番組に出してくれる顧客でもある。一方でテレビ局は上場企業で、何よりも総務省の許認可を受けて事業を行う公器であり、社会的責任は極めて大きい。一般企業の感覚なら今回の問題を受けて、「吉本の芸人である以上、反社リスクが存在する。この恐れが拭えない限り、吉本の芸人は使えない。吉本との資本関係も見直す余地がある」と判断するのが普通。さもなくば他の取引先と自社の株主が許さない。