首相の安倍晋三は、参院選で与党過半数確保を受けて行った7月22日午後の記者会見で胸を張った。だが内実は「勝利感なき勝利」(自民党幹部)。比例代表では前回同様19議席を獲得したが、総有権者に対する得票率は17%にとどまった。野党多党化の“恩恵”に浴したにすぎない。
選挙前にあった参院の自民単独過半数を失い、安倍の悲願でもある憲法改正に必要な「改憲勢力3分の2」も維持できずに終わった。
れいわ新選組やNHKから国民を守る党などの国政進出は、永田町の政治に強い不満を抱く有権者が相当数いることを浮かび上がらせた。1995年の参院選以来の投票率50%割れは既成政党全体の敗北といえるかもしれない。安倍にとって残された最後のカードでもある解散権の行使もそう簡単ではないだろう。
「少なくともオリンピック前は難しくなった」
自民党選対幹部が漏らしたこの一言が現状では最も平均的な与党内の“相場観”だ。安倍にとって国政選挙6連勝とはいえ、ほろ苦い勝利であることは間違いない。それ以上に安倍にとって深刻なのは、選挙期間中に日本を取り巻く外交環境がとんでもないことになっていたことだろう。