財閥系グループの求心力低下が懸念されているが、財閥系グループの競争力の源泉だった国内企業ネットワークは盤石なのか。東京商工リサーチの協力を得て、七つの企業グループの経済圏を試算した。(週刊ダイヤモンド2019年7月20日号を基に再編集)
「最強伝説」は偽りだったのか。さかのぼること3年前、ダイヤモンド編集部は三菱グループの特集を組んだ(2016年1月25日公開記事「三菱最強伝説」を参照)。
グループの求心力の強さ、有事対応時にこそ問われる長期的な損得勘定、そしてグループ企業のネットワークの広さ──。三井、住友を凌駕する三菱の強さに迫った企画だった。
それから3年。国内市場の停滞とグローバル経済の動乱が一気に押し寄せ、企業グループを取り巻く外部環境は激変した。企業のビジネスモデルも変わった。所有から利用へ、売り切りからシェアへ。稼ぎ方が変われば、企業グループも変容を迫られるのは当然だ。
ついに、鉄の結束を誇った三菱がグループ瓦解の危機にひんしている。それは、既存のビジネスモデル、既存の企業連携では事業が立ち行かなくなった証しであろう。
実際には、三菱グループの実力はどの程度なのか。定量データを駆使して検証してみた。
三菱経済圏は
シンガポールやフィンランドに匹敵
410兆円──。三菱グループと取引のある国内企業の売上高総額である。これは、国内における「三菱経済圏」の市場規模と言い換えることもできる。信用調査会社の東京商工リサーチの協力を得て、ダイヤモンド編集部が独自に算出したものだ。
東京商工リサーチが保有する企業の財務データから、三菱グループの主要企業27社の仕入れ先企業、販売先企業、出資先企業を抽出した後に、重複を除いて売上高をはじいたものだ。
三菱経済圏410兆円に含まれる関係先企業は4万社超に上り、関係する従業員数は548万人。実に、シンガポールやフィンランドの人口に匹敵する規模だ。