三菱・三井・住友 財閥グループの真実#4
三菱自動車がリコール隠しに揺れた2004年当時、三菱の御三家はまさに一丸となって同社の再生を支えた。しかし、それから15年たった今、グループの統制力は低下している。(週刊ダイヤモンド2019年7月20日号を基に再編集)

「長兄」三菱重工、「次兄」三菱商事
「三男坊」三菱UFJ銀行

「出来のいい次兄に、長兄はいつも少し嫉妬している。三男坊は、そんな二人をそつなく見守るしっかり者です」(三菱グループ幹部)

 三井、住友とは違い、三菱は三菱重工業、三菱商事、三菱UFJ銀行から成る「御三家」がグループ内で圧倒的発言権を有する企業グループだ。だが厳密にいうと、この御三家の中にも序列が存在する。近代日本の発展を支えた三菱重工が「長兄」であり、「次兄」に三菱商事、「三男坊」に三菱UFJ銀行と続く。

 しかし、世界に冠たる企業と切った張ったを繰り広げるグローバル企業の三菱商事の存在感が増すにつれて、御三家には微妙な隙間風が吹くようになった。三菱グループの四大事案への対処法にも差が出てきている。

 まず、三菱最大の懸案事項といわれる「三菱スペースジェットファミリー(旧MRJ)」だ。三菱重工傘下の三菱航空機が2008年に事業を開始したのだが、開発は難航。初号機の納入が当初計画から7年も遅延している。

 三菱航空機は18年3月末時点で債務超過に陥っていたものの、この債務超過の解消費用と、初号機を納入する20年までの開発費は三菱重工が自ら手当てした。

 開発の遅れによって発生したコストなのだから当然だが、問題はこれからである。顧客を囲い込むためには、席数の違うシリーズ機を開発しなければならないからだ。

 では、その開発費用は誰が持つのか。それがまさに今、三菱重工で議論されている。もともと三菱航空機には三菱商事も出資しており、追加出資の有力候補となり得るはずだが、三菱重工は三菱商事を最有力候補とは考えていない。

「今からは回収期。追加出資してもらうことで利益が商事に流れるのは癪だ」(三菱重工関係者)というのが理由の一つだといわれる。

 もっとも、三菱商事とてそう簡単に出資に応じることはできないだろう。開発遅延でこれまで出資した資金が「紙切れになった」(三菱商事幹部)恨みもあり、社内の稟議を通すのは相当難しそうだ。