第36回 水産日本一の食材調達力を生かす  スシローグローバルホールディングス代表取締役社長 CEO 水留浩一Photo by Hiroki Kondo

回転ずしチェーン最大手のスシローは、2021年9月期までに売上高2400億円、将来的に1兆円を目標に掲げている。総合外食企業を目指し、居酒屋などの新業態にも着手している。スシローの目指す世界観を、水留浩一社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 相馬留美)

スシローの「ス」の字も出さない
新業態の居酒屋は伸びていく

――外食業界で今後合従連衡が起きるということに言及しました<インタビュー(上)参照>。スシローの戦略は。

 われわれの企業としての強みは、食材の調達力。特に水産系はおそらく日本一で、外食業界で調達額は最も多いと思う。その調達力を活用した居酒屋などの他業態を考えていきたい。2017年から始めた大衆すし居酒屋「鮨・酒・肴 杉玉」(以下、杉玉)は非常にいい形で受け入れられているので、伸びていくと思います。

 スシローはスペースを取る業態です。だから、複数の店舗を高い密度で出店できる体制をつくっていきたかった。一方、杉玉は30坪あれば出店できる業態なので、関東ならば全ての駅にあってもいい。杉玉の3店舗目までは、スシローの「ス」の字も出しませんでした。スシロー感が出てしまうからです。今も気付いていない人はいると思いますし、別のものとしてやっていきたい。

――杉玉とは別に、「山手線全駅出店プロジェクト」(JR山手線の全駅でスシローを展開する計画)も打ち出しています。ロードサイドに出店余地がないということでしょうか。

 いや、30店舗出すとしたら、そのうち22~23店舗は今もロードサイド店です。ただ、都心で場所を探している。山手線をすし広告でラッピングしたのも、ビルのテナント候補としてオーナーに「スシロー」を想起してもらいたかったから。

 都心店はすし1皿120円で、同100円の郊外店より値段を上げました。ですが、荻窪店などは郊外店舗よりもはるかに利益が上がっています。ですので、課題は家賃ではなく、レーンが入る程度の広さのある場所を見つけることなんです。オフィスビルでもいい。家賃より人のトラフィックが重要です。

――全国的に外食産業は人手不足が大きな課題です。その一方で、同業他社の“バイトテロ”も問題になりました。リスクマネジメントへの対策は。

 うちだって(バイトテロが)発生してもおかしくない。そこで、店に正社員を2~3人配置し、彼らを中心にして運営するのが一つの対策です。同業他社には2~3店舗で社員が1人というケースもあり、コミュニケーションが希薄になると、問題が出てくるように思います。

 もう一つ、「何かをやると周りに迷惑がかかる」という仲間意識を持ってもらうこと。そうすれば変なことはしないと考えている。現場は現場で判断することができていれば、バイトテロは起きないのではないでしょうか。

――外食産業では、今秋の消費税増税のインパクトも大きいです。御社への影響の予想は。

 過去のデータを見ると、プラスマイナスゼロですね。価格帯としては安いゾーンなので、価格帯の高いところから(客が)下りてきてくれるので(笑)。