一気にAI、ロボットによる自動化にかじ舵を切るPhoto by Masato Kato

米中貿易摩擦や中国の景気減速という逆風に晒される京セラだが、谷本秀夫社長は中長期の成長に自信を見せた。人工知能(AI)やロボットによる業務改革や自動運転の進化といったビジネスチャンスを見据え、積極的な投資へ打って出る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

――研究開発費と設備投資を合計2000億円規模に増やす方針を示しました。なぜいまが勝負どころとみて投資を拡大しているのですか。

 一つの要因は少子高齢化です。会社が急成長した時代に、京セラはたくさんの人を採用しました。私ぐらいの年代の社員です。いまから定年退職を迎えますが、急成長の時代と同じ人数を新入社員で採れるかというと難しい。だから、仕事をできるだけ自動化する必要があるのです。

 人工知能(AI)も大きな要因です。いま第三次のAIブームといわれています。一次、二次のブームは実用化できませんでしたが、三次はビッグデータ処理などで明らかに活用できそうなレベルに来ている。ロボットにしても、あらゆるところで実用化できるところまで技術が進歩しました。ここは一気にAI、ロボットを活用した自動化にかじを切るべきだと判断したわけです。

――研究開発費と設備投資が売り上げの1割ほどになりますが、これほど高い構成比になったことはありますか。

 かつてないですね。もう少し上げてもいいと思っていましたが、ちょっと景気がよろしくない。残念ながら、今年は横ばいになると思います。

――足元の景気はさておき、新時代に対応するための大事な時期ということですね。

 第5世代通信規格「5G」が、通信キャリアさんによるサービスだけではなくて、工場内だけでの5Gを構築できるようになっています。大規模な工場は独自に5Gを導入していくでしょう。そういった分野から新たな事業領域が広がっていきます。ここ5年から10年が勝負どころじゃないかと思います。